上海駐在レポート

第 52 回「中国自動車事情」

第 52 回「中国自動車事情」

中国人は住宅を購入することと同様に、有名ブランドの自動車を購入することにも強いこだわりを持っています。実際、上海で走っている自動車に注目してみると、ドイツや日本・米国等の外車をよく目にします。上海では4月20日から29日までの10日間、中国最大の自動車展示会「第16回上海国際汽車工業展覧会(上海モーターショー)」が開催されましたが、会場内はどのブースも非常に盛り上がっており、特に海外メーカーのブースには多くの人が集まっていました。
今月のレポートでは、中国の自動車事情に触れるとともに、上海でのナンバープレート事情についてもご紹介したいと思います。
 
○ 中国自動車市場の動向
近年、中国では爆発的に自動車が売れています。2005年の販売台数は573万台でしたが、2014年には約4倍の2,349万台となりました。なかでも乗用車販売が好調で、2005年の387万台から2014年には約5倍の1,970万台(全体の84%)と中国自動車市場を牽引しています。2009年には、米国を抜いて世界一の自動車市場となりました。
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乗用車1,970万台の内訳を見ると、かつてはセダン一色であった車種も多様化しています。最近では、SUV(スポーツ用多目的車)・MVP(ミニバン)車が仕事や休日のレジャーでも使え、家族・多人数が一緒に乗れることから人気を高めているようです。
2014年の中国乗用車販売台数をメーカー国別シェアで比較してみると、中国(38.4%)がトップで、ドイツ(20.0%)・日本(15.7%)・米国(12.8%)と続きます。冒頭でも触れましたが、筆者の住む上海では、高所得者層の多い地域であるため、実際に走っている自動車には統計以上に国産よりも外車が目立ちます。
日本はドイツに外車でのトップの座を明け渡している状況ですが、要因としては、日系自動車メーカーの中国現地での生産開始が遅れたことに加え、2012年の尖閣諸島国有化による反日デモが影響していると言われています。
なお、日系主要メーカーの2014年中国国内販売は、日産(122万台)・トヨタ(103万台)・ホンダ(78.8万台)と続きます。トヨタグループは2014年の販売台数が世界第一位(1,023万台)でしたが、中国では苦戦を強いられており、2年越しで輸入車を含めてやっと100万台を突破した状況です。そんな中、中国で急激に販売を伸ばしているVW(フォルクスワーゲン)が2015年の販売台数で世界一の座を奪う様相となっています。
 
○ 上海モーターショー
 
上海モーターショーは、北京モーターショーと交代で1985年から隔年で開催されている自動車展示会です。今年は世界18か国・地域から約2,000の企業が1,343台(内109台が世界初公開)を出展しました。日系メーカーは中国で環境規制が強まる中で需要が拡大するエコカーや、主要購買層となる80年代や90年代生まれの若者をターゲットとする新型車を発表し、年間販売台数2,000万台を超える世界一の中国市場に注力する姿勢を示しました。日系メーカーの中で中国国内販売トップの日産は、セダンとSUVでそれぞれ世界初公開の新車を発表し、IT世代の若者が重視するコネクティビティ(接続性)においては、スマートフォンと接続可能なオーディオシステムなどを取り入れて、日産として初めて中国の若者向けにデザイン開発した車種を公開しました。
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<上海モーターショーの様子>
さらに、トヨタは海外で初めて現地開発・現地生産した新型ハイブリッドカー(HV)2車種を公開しました。2車種とも中国市場向けのモデルとして、江蘇省常熟市に本部を置くトヨタ自動車研究開発センターが中心となり開発し、基幹部品の電池やインバーター・トランスアスクルの現地生産を世界で初めて実現しました。トヨタは4月より広州工場に第3ラインを新設することを発表しており、今後も中国市場向けに販売を拡大していく計画で、将来的には年間新車販売を200万台とする目標を掲げています。
VWやGM等の欧米メーカーに人気が集まる中、日産やトヨタ等の日系メーカーにも来場者は注目しており、日本車の人気の高さを伺うことも出来ました。次の上海での開催は2年後になりますが、日系メーカーがどのような車種を出展してくるのか今から楽しみで仕方ありません。
 
○ ナンバープレートの購入
このように外車の人気が高い上海では、自動車の購入だけでも相当の資金が必要となってきますが、更に上海ではナンバープレートも別途購入しなくてはなりません。上海では自動車の保有者が急増したことにより交通渋滞が深刻化しており、その対策として出されたのが新車登録制限によるナンバープレートのオークション制度です。具体的には、上海市内での年間の車両増加数を一定台数に制限し、ナンバープレートの取得に際しオークションを行い、取得できない場合には自動車を購入できないというものです。オークションは毎月行われていますが、5月は156,007人がオークションに参加し、7,482人(倍率4.8%)が取得することができたとの報道がありました。ちなみに最低落札価格は79,000元(約154万円)とのことで小型乗用車並みの価格となっており、上海では自動車一台購入するのに、約二台分の費用がかかることになります。一方で、オークション形式である為、参加者全員が低い入札価格を提示すれば落札価格も低く抑えられますが、それだけの落札価格になっても取得したい人が多くいるところに、中国人の新車購入の需要の高さが伺えます。
 
 
○ 終わりに
上海市内ではナンバープレートによる自動車購入制限を行っているにも関わらず、交通渋滞は一向に解消する気配がありません。その他にも、高架道路の通行を早朝の出勤時間帯や夕方の帰宅時間帯には上海ナンバーの車に限定するといった規制もありますが、やはり思うように対策出来ていないのが実情です。こうした状況では、思い切って全時間帯で上海市内を運転できるのは上海ナンバーのみとしたり、ナンバープレートだけでなく運転免許証の取得にも一定の制限をかけるといった大胆な規制を出さないと交通渋滞は解消されないのかもしれません。
年々販売台数を伸ばす魅力的な中国自動車市場ですが、その裏にはこのような問題も多くあります。光と影のある中国自動車市場の動向には、今後も注目していきたいと思います。
 
 
 
 
 
(1元=19.5円)
以上
上海駐在 小林邦寛
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