上海駐在レポート

第 51 回「上海の日系百貨店」

第 51 回 「上海の日系百貨店」

 

上海では地下鉄網の発展により、百貨店やショッピングモールの出店が相次いでいます。市中心部の商業地区だけでなく郊外への出店も増えてきており、郊外にある自宅近くでも買い物が出来るようになりました。また、テナントは以前よりも豊富に揃えられており、店内では居心地のよい空間が提供され、旅行者にとってはショッピングや食事を楽しむ場所であり、ビジネスマンにとっては流行を把握できる場所でもあります。
現在、日系の百貨店各社は独自の特色を出し、商業激戦区といわれる上海で奮闘中です。今月は、上海に展開する日系百貨店・ショッピングモールについてご紹介致します。
 
○ 百貨店・ショッピングモールの位置づけ
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上海には多くの総合小売店が存在しますが、規模によって①コンビニ(便利店)・②スーパー(超市)・③ハイパースーパー(大型超市)・④百貨店と4つの形態に分けられます。
ショッピングモールについては定義されていませんが、右表ではハイパースーパーと百貨店の中間に位置づけされます。また、陸家嘴地区のIFCモールや正大広場、淮海地区のiapm等、百貨店と同等もしくはそれ以上の規模の大型ショッピング施設も上海では多く展開されています。
上海は地場の百貨店・ショッピングモールだけでなく、日本・香港・台湾・タイ・マレーシア・欧米等世界各地の資本が参入している世界的に見ても大商業激戦区であります。
2014年上海の一人当たり年間可処分所得は47千元(約920千円)、消費支出は30千元(約590千円)となっており、全国トップであることから、競争は年々激しさを増してきています。
以下では、商業激戦区である上海において奮闘する日系企業の百貨店・ショッピングモールの特色についてご紹介したいと思います。
 
○ 伊勢丹
 
中国上海では「梅龍鎮伊勢丹」が1997年にオープンし、15年以上営業を行っています。地下鉄2号線の南京西路駅付近に位置し、主にホワイトカラーの女性をターゲットとしています。建物は地下1階から地上7階建ての構造となっており、6階には日本の「TOKYU HANDS」が入居し、同階では毎月日本の地域物産展(4月は九州物産展)が催されています。地下1階はレストラン街となっており、日系ではとんかつ屋の「和幸」や回転寿司屋の「がってん寿司」等が入居しています。伊勢丹は上海のほか、天津・成都等にも展開しています。
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○ 高島屋
2012年12月に中国に進出した高島屋は、地下鉄10号線の伊犁路駅に直結した上海市西部の古北地区に位置します。主な顧客層に、中国人の高額所得者や中間所得者、さらに近隣に駐在する日本人や欧米人をターゲットとしています。付近のマンションからはシャトルバスも運行しており、買い物しやすい環境が整っています。
また場所が都市部の観光地ではなく住宅地にあるため、訪れる顧客は他の百貨店よりも購買力が高いと言われています。建物は地下1階から地上7階建ての構造で、地下1階にはスーパーマーケットが併設されています。また、3階では各国のグルメ展(4月上旬は台北・香港・上海のグルメ展、4月下旬には九州・沖縄のグルメ展)が催されており、集客力向上を図っています。
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○ APITA(雅品嘉)
2014年9月にオープンしたユニーグループのショッピングモールです。APITAはアーチ型のオフィスビルに連結している「ARCH WARK」という地下歩行街の一角に位置し、地下鉄2号線娄上関路駅に直結しています。尚、「ARCH WARK」は現在娄上関路駅にのみ直結していますが、将来的には、10号線の伊犁路駅まで延長するという話もあります。
APITAは、主に20~40代の働く女性をメインターゲットにしており、スーパー・フードコート・ファッション雑貨等を扱う専門店が並ぶ構造となっています。業界内での位置づけとしては高級スーパーを上回る鮮度・衛生管理・従業員サービス、また百貨店よりもリーズナブルな価格を追求しており、「ネットでは体験できない新しいライフスタイルを発見できる場所」をコンセプトとしています。
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○ 大丸
日本では関西地方を中心に展開している大丸ですが、「上海新世界大丸百貨」として2015年2月にプレオープンし、来月5月には正式にオープンを予定しています(プレオープン期間中の営業時間は10時~20時)。地下鉄2号線の南京東路駅に直結しており、高額所得者や観光客をターゲットとしています。建物は地下2階から地上6階建ての構造ですが、1階から最上階までが見渡せる内装となっており、開放感のある非常に豪華な造りとなっています。
大丸だけに限ったことではありませんが、中国ではテナントが全て揃わない内にオープンしてしまうことがよくあります。オープンのニュースを聞いて大丸を訪れても、オープンしていないお店が半数ほどあり、店内を歩いても物足りないと感じた方は少なくないのではないでしょうか。
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○ 日系百貨店の今後の展開に期待!
中国の百貨店市場においては、ネットショッピングの成長、中央政府による「倹約令」の発布、店舗賃料・人件費等の暴騰、人民元高による海外でのショッピングの増加等あらゆる要因により、集客力が落ちてきており、百貨店はビジネスモデルの転換が求められているように感じます。
一方、2015年5月には上記ご紹介した大丸の正式オープンや、香港系の佳程グループが投資する佳程広場が開設する他、2017年には三井不動産による「ららぽーと」のオープン、2020年までには上海万博跡地の再開発が予定されており、商業激戦区である上海の百貨店・ショッピングモールの新規出店は止まるどころか加速する一方です。
日系の百貨店・ショッピングモールが今後どのように差別化を図り、集客力を高めていくのか、期待を持って注目していきたいと思います。
 
 
 
 
 
(1元=19.5円)
以上
上海駐在 小林邦寛
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