上海駐在レポート

第 49 回 「上海の地下鉄事情」
第 49 回 「上海の地下鉄事情」
 
 
 現在、上海市中心部では徒歩15分圏内に1駅が設置されるほど地下鉄網の整備が進められていますが、意外にも初めて上海に地下鉄が開通したのは1993年4月(地下鉄1号線での部分開業)と、他の地域に比べ地下鉄の整備はかなり遅れていました。しかし、今では総延長が世界最大となり、上海生活における移動手段として欠かせないものとなっています。上海地下鉄網は2020年までにはさらに路線を拡大する計画があり、ますます上海市内全体の発展が期待されています。
 今月は、成長の一途を辿る「上海地下鉄」について、ご紹介したいと思います。
 
 
〇上海市内の人口・GDP推移
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〈上海市統計局HPにより作成〉  
 まずは上海地下鉄発展の背景にある上海市内の人口・GDP推移についてご紹介致します。人口・GDPは右図の通り、2000年代に入り急速な成長を遂げており、2013年には人口2,400万人を突破、GDPも2000年から比べ452%の成長率で推移しています。また平均給与(年収)も、2000年の18,035元から2013年には62,203元と345%の上昇率となっており、こうした背景からも上海地下鉄網の発展が必然であったことが窺えます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
〇上海地下鉄の概要
 「上海地下鉄」は、現在では地下鉄だけでなく地上路線部分(3号線等)も運行しているため、正確には地下鉄とは言わず、正式名称は「上海軌道交通」とされています(但し日常ではやはり「上海地下鉄」と呼ぶことが多いため、以降の記載も「上海地下鉄」とさせて頂きます)。2007年には僅か5路線しかありませんでしたが、その後2010年の万博開催に向け急ピッチで整備が進められ、2015年現在、全部で14路線まで拡大されています。なお、2020年には22路線まで拡大が予定されており、その発展スピードには目を見張るものがあります。
 また、運賃は距離によって異なりますが3~15元と割安な価格水準となっており、運行頻度も市内中心部であれば約5分に1本、始発は5時半~6時と日本とさほど変わりません。しかし、終電は22~23時と日本よりも少し早い時間設定となっております。
その他、最新の路線図、運行時間、駅周辺地図、出口番号、運賃、各路線の始発、終電等の最新情報は下記URLをご参考ください。
【上海地下鉄HP】 http://service.shmetro.com/czxx/index.htm
また各路線の特徴については、下記の通りです。尚、14号線、15号線は16号線よりも先に建設計画が発布されましたが現在も建設中となっております。
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〇上海公共交通カードの活用
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〈上海交通カード、他に緑、黄、紫色のカードがあります〉  
上海公共交通カード(以下「交通カード」という)は日本で言えば「Suica」、「PASMO」のようなカードです。上海では地下鉄だけでなく、バス、タクシー、リニアモーターカー、渡し舟、駐車場、高速道路でも利用することが出来ます。各地下鉄の駅窓口等で購入可能で、購入時のデポジットは20元です。お金をチャージするには、同じく駅窓口の他、コンビニでも可能となっています。また、交通カードの返却は、市内に設置された返却カウンター(購入した駅窓口では返却できません)で行うことができ、デポジット20元と残額(10元以内は全額、10元以上は5%の手数料を引いた金額)が返却されます。空港にも返却場所が設置されていますので、旅行や短期出張等で来られた際も便利に利用することができます。尚、交通カードは最後にチャージした日から5年間有効となっています。
 カード残高や販売場所、返却場所を調べる際には下記URLをご参考下さい。
【上海交通カードHP】 http://www.sptcc.com/
 また、下記に交通カードのお得な利用方法をご紹介します。
・ 地下鉄を降りて120分以内にもう一度地下鉄に乗ると、運賃が1元安くなる
・ リニアモーターカーの運賃(50元)が交通カードを使うと40元になる
・ 一ヶ月に交通カードを70元分地下鉄で利用すると、その月の70元を越えた分から地下鉄運賃が10%安くなる(例えば、通常4元のところ3.6元になる)
・ 緑、黄、赤の交通カードは、上海以外に蘇州、無錫、杭州、杭州、常熟等でも利用可能
・ 紫の交通カードは無錫、紹興、寧波、昆山、常熟等でも利用可能
 
 
 
〇「上海地下鉄」について 
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〈地下鉄車両内の電子版広告〉  
筆者が上海地下鉄について気づいたこと、感じたことを下記に記載致します。
・ 日本に比べ運賃が安い(上述の通り、市内中心部の運賃は3~5元)
・ 次にくる電車の到着予定時間の掲示はあるが、時刻表はない
・ 改札でX線手荷物検査を行っている
・ 車両内のイスはプラスチック製(日本のようにクッション式ではない)
・ 車両内には中吊り広告は一切無いが、窓の外に電子版広告を採用
・ 車両内でライブを行う者、チラシを配る者等がいる
・ 駅のホームにはほとんどの場所にホームドア(人と列車の接触を防ぐドア)がある
・ ホームで電車を待つ際に、以前よりもきちんと並んで待つ中国人が多い
・ 電車が到着すると、乗っている客が降りるのを待たずに電車に乗ろうとする客が多い 等々
他にもありますが、少なくとも上記は上海に初めて来た日本人が共通して抱く印象ではないでしょうか。
上記事項からは、例えば、急速な経済発展を遂げている中国において、運賃だけは変わらず低料金で推移している点から未だ残る貧富の差を感じることができ、電車の乗降者が入り混じる光景からは、中国人一人一人の前へ前へという気質を読み取ることができます。また、人口・GDPの増加が地下鉄網拡大に繋がっている点や、電子広告等の最新技術を導入している点からも、地下鉄の発展が中国経済発展の鏡として映し出されています。
つまり、「上海地下鉄」という場所は中国人の生活観、国民性等が垣間見え、「中国」という国を理解する上で、一つの重要な場所ではないかと筆者は感じています。上海にお越しの際は、是非地下鉄に乗り、「中国」という国を肌で感じてみてください。                               
 
1元≒19.2円
以上
 
 
上海駐在 小林邦寛
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで

 
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