上海駐在レポート

第 48 回「支付宝(アリペイ)の活用」

第 48 回「支付宝(アリペイ)の活用」
 

2014年が過ぎ、新しい年が始まりました。昨年の急激な元高円安により、多くの駐在者の生活に影響が及んだことと存じます。一方、上海駐在生活が1年を超えた筆者も今回の円安の影響を受け、なるべく為替変動に影響されない現地生活を過ごしていきたいとも考えています。そこで改めて現地生活に工夫を凝らし、より快適な上海生活を過ごすべく、今回「支付宝(アリペイ)」というオンライン決済サービスの利用を始めました。
今月は「支付宝」について、筆者自身の実体験に基づき外国人の登録方法や活用方法等ご紹介したいと思います。
 

〇「支付宝」とは
 「支付宝」とは、アリババグループが提供する中国最大規模のオンライン決済サービスです。中国のオンライン決済市場では、日本と異なりセキュリティや商習慣の違いからクレジットカードよりも支付宝による決済が最も普及率の高い決済手段となっています。というのも、中国には「信用できるのは現金のみ」という商習慣が今でも根強くあり、そうした背景から「支付宝」は消費者保護を第一とした考えにより、運営を行っているからです。
なお、中国ネット通販最大手の「淘宝(タオバオ)商城」での商品購入時の「支付宝」決済システムの仕組みは主に以下の通りです。
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【淘宝決済システム図】  
   

① 淘宝店舗(以下「売り手」という)に対して商品を注文。
② 買い手は自分の「支付宝」を使い、「支付宝」に商品代金をプール。
③ 「支付宝」は売り手に商品代金がプールされたことを通達。
④ 売り手は代金が「支付宝」にプールされたことを確認して商品を発送。この時点では、売り手には商品代金は支払われていません。
⑤ その後、買い手は商品が届いたことを確認して、商品受け取りを「支付宝」に伝達。
⑥ すると、「支付宝」に預けていた商品代金が売り手へ支払われる仕組みとなっています。
「支付宝」はこのような決済システムを確立したことにより「商品代金を支払ったが商品が届かない」「注文した商品の数量が異なる、全く別の商品が届いてしまう」といったトラブルを未然に防ぐことができます。
 
 
 
〇 外国人の登録方法
 それでは実際に「支付宝」の登録方法についてご紹介したいと思います。
①「支付宝」にアクセス(www.alipay.com)し、個人アカウントの作成(登録は無料)
個人アカウントの作成は手順に従って進めば、複雑な手続きは特にありません。
②実名認証登録
外国人の場合、「支付宝」の個人アカウントを作成しただけでは、「支付宝」の利用は制限されており、様々な機能を利用する為には、更に「実名認証」登録を行う必要があります。筆者もここでの手続きに苦労しましたので、以下に詳しく紹介させて頂きます。尚、「実名認証」にはパスポートと入国証明、中国地場銀行の口座開設が必要のため、中国に駐在していないと「実名認証」登録は出来ません。
a)【個人アカウントでログイン】>【賬戸設置(口座登録)】>【基本信息(基本情報)】
 
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【登録完了画面】
>【立即認証(即時認証)】をクリック
b)【外籍】を選び、【立即申請】クリック
c)個人情報を入力
・姓名(漢字或いはローマ字)
・証明書番号(8桁のパスポート番号、8桁に足りない場合は前に0を加えます)
・パスポート,入国証明(或いは「外国人永久居留証」「外国人居留許可」)をスキャンした画像データを添付
入国証明には合わせて入国スタンプの画像も必要となります
・住所、電話番号
d)銀行口座情報の入力
・銀行名義
銀行口座開設時に届け出た名義を入力(ローマ字であればローマ字を入力)

・利用できる銀行は、中国工商銀行、中国建設銀行、中国銀行、中国農業銀行(以下「中国四大銀行」という)等多数あります。
e)1~2日後に登録した銀行口座宛に1元以下の金額が振り込まれます(筆者の場合、0.43元の振込みがありましたが、一人一人振込み金額は異なります)。振込みを確認しましたら、「支付宝」の個人ページにログインし、【申請認証】をクリック。振り込まれた金額を入力します。
f)その後、「支付宝」が2日間ほどで審査を行い、「支付宝」の個人ページにて結果を確認します。
右のようなメッセージが出れば登録は成功です。これでようやく「支付宝」を利用することが出来ます。
 
 
 
〇 活用方法
 現在、中国国内のインターネットユーザーは6億人を超えると言われていますが、その半数である約3億人が「支付宝」を利用しているとのことです。当初は、淘宝での商品代金決済の為に設立された「支付宝」ですが、現在ではそれ以外にも多種多様な機能を持ち、様々な場面で活用されています。本稿では上海生活に役立つ便利な機能をいくつか紹介したいと思います。と
①余額宝(ユエバオ)
「余額宝」は以前のレポートでもご紹介しましたが、「支付宝」の口座内にある余剰資金を運用する金融商品です。投資額は1元から運用可能で、いつでも引き出すことが出来ます。元本保証ではありませんが、主な運用先が銀行の大口定期預金や国債等安全資産が中心であるとのことで、低所得者層にも関心が高まっている商品です。金利は日々変動し、利用開始当初は7%弱の金利だったのが、現在では4%前後で推移しています。「余額宝」の長所は、日割りの利子が毎日反映されるため、1元程度とはいえ、着実に資金が増えていることが実感できる所にあります。
②送金機能
 送金機能は、「支付宝」の個人アカウントを持っている者同士で資金の融通が出来る機能です。例えば、知り合い何人かで食事に行った際に、一人がまとめて食事代金を支払い、後で各人の割り勘金額をまとめてくれた人に送金する時に使用します。「支付宝」間での送金には手数料もかかりませんし、非常に便利です。中国人スタッフに「支付宝」について伺うと、送金機能を一番多く利用するとのことでした。
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【携帯電話内の支付宝の機能一覧】  
   
③携帯電話入金機能
 中国では、携帯電話の支払をプリペイド式とされている利用者が多く、金額が不足し始めると、事前にコンビニや携帯電話ショップ等に行き金額をチャージする必要があります。
「支付宝」を利用することにより、携帯電話番号とチャージ金額を入力するだけで、その場ですぐに料金がチャージされ、わざわざコンビニ等に行く必要もなくなりました。
④クレジットカード支払機能
 中国では、給与振込みは規模の大きい中国四大銀行とし、クレジットカードには地元の地場銀行を利用されている中国人スタッフが多くいます(地元の地場銀行等は預金者を増やす為に、四大銀行よりもクレジットカードのサービスをより良く提供している銀行が多いため)。その際、クレジットカードの支払に銀行間で資金の移動をするのではなく、他の機能としても利用する「支付宝」に資金をチャージしておき、クレジットカードの決済を行う方が多いようです。
⑤割引券購入の為の「支付宝」利用
 中国のアプリに「大衆点評」というレストラン、映画、マッサージ等の店舗情報の紹介等を行っているアプリがあります。このアプリには割引券を提供している店舗が多くありますが、割引券を利用する為にはオンライン決済機能を事前に登録しておく必要があり、今まで割引券を利用するには、中国人スタッフにお願いするしかありませんでした。今回、「支付宝」を登録できたことにより、筆者も直接利用することができ、食事等節約した生活が可能となりました。
 
 
〇終わりに
 「支付宝」について登録方法や便利な機能の一部をご紹介しましたが、「支付宝」はこの他にも公共料金の支払いや航空チケット、宝くじの購入等生活に関するあらゆる物やサービスの決済手段の提供を行っています。しかし、様々なサービスの支払が一つの決済手段で可能である一方、元々購入する予定のなかった物やサービスまで簡単に手続が出来てしまう為、衝動買いによる無駄遣いが多くなる危険性もあります。このように便利な「支付宝」ですが、利用する際には自分自身でよく使う目的を認識し、ご利用することをお勧めします

 
以上
上海駐在 小林邦寛
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