上海駐在レポート

第 47 回 「上海の高層ビル事情」

第 47 回 「上海の高層ビル事情」

毎年12月は中国にとって決算月であり、一年間の仕上げの月として、何かと忙しい時期かと存じます。筆者が駐在する上海では、浦東新区陸家嘴地区にある森ビルグループが開発した「上海環球金融中心」の隣に、世界第2位の高さとなる「上海センター」が、2015年の開業に向け最後の仕上げを行っています。
今や中国を牽引する経済都市に成長した上海ですが、「上海センター」のような、国力を誇示する上で象徴となる高層ビルの建築はまだまだ止まる気配がありません。
今月はそうした上海の高層ビル事情について、レポートしたいと思います。
 
○上海の高層ビルの特徴
3.jpg
《上海市内の高層ビル群》
(1)数
どの程度の高さ以上を「高層ビル」と定義するかについては、国際的に統一された明確な基準はありませんが、現在、上海では高さ60メートル以上の建物が5,000棟以上あると言われています。その内、高さ200メートル以上の高層ビルが50棟以上あり、中国国内でトップの数となっています。日本では、2014年3月に竣工した大阪の「あべのハルカス」や横浜の「ランドマークタワー」をはじめ、高さ200メートル以上の高層ビルは日本全国で約20棟であることからも、上海の規模の大きさが窺えます。
 
4.jpg
 
(2)デザイン
5.jpg
《外灘から眺めた陸家嘴地区》
上海の高層ビルには奇抜なデザインの建築物が多く、初めて上海を訪れる方は驚かれることが多いのではないでしょうか?特に、陸家嘴地区に並ぶ高層ビル群には、高層階が四角く空洞化されたビル、屋上が鋭角に尖っているビル、金色に覆われたビル等、東京のように周りとの調和を重んじた落ち着きあるデザインよりも、一つ一つが個性を持っていることが特徴的です。
このようなデザインが出来る要因として、上海には地震が殆どなく、耐震強度を気にする必要がない点や、日本ほど建築に対する法規制が厳しくなく、世界の設計士が集まって、自由に思い切った設計を行えるといった点が理由に挙げられます。
 
(3)風水
中国人は古くから風水を重んじる人種であることから、上海の様々な建築物にも運気が来るよう、そのデザインにも風水が大きく関わっています。
例えば、上海環球金融中心は、高層階に四角い空洞がありますが、ここには金運を吸い集める意味があり、また四角く開いた空洞は中国古来の貨幣の四角い穴を意味し、更なる金運上昇の意味が込められているようです。
 
○「上海センター」
(1)設立経緯
7.jpg
《上海センター外観》
2008年11月の着工から約6年の月日が経ち、まもなく「上海センター」が完成しようとしています。そもそも隣の「上海環球金融中心」が完成したのが2008年8月でしたが、何故すぐに新しい高層ビルを建築しようとしたのか、という理由には、中国人の面子が見え隠れしていると言われる説もあります。「上海センター」の着工当時、「上海環球金融中心」は中国で一番高い高層ビルとして高く聳え立ちました。そこに、前述したように金運が集まるとされる風水が重なったことから、中国人としては外資のビルが中国で一番となり、そこに経済主要都市である上海の運気が集まるのは面白くない、といった考えから今般、「上海センター」の建設に至ったと言われています。
 
(2)デザインと構造
デザインは、米ゲンスラー社による、龍のように螺旋状に捻じれながら天に昇っていくという案が採用されました。9つの円形状の建物が垂直に積み重なり、更に二重ガラスで外観を形成しています。内側と外側の二重ガラスの間には、9つのアトリウムがあり、一般公開される予定です。
また、ビル内の延床面積は地上部分38万平方メートル、地下部分17万平方メートルあり、オフィスや商業施設に加え、世界で最も高い場所に位置するホテルや三菱電機が納入する世界最高速度のエレベーター(分速1080メートル)が設置される予定です。
 
(3)環境面
「上海センター」のデザインはエネルギーの効率や持続性についても考慮されています。螺旋状に捩じれたガラス壁は雨水を集められるようになっており、ビルの空調や暖房に利用されます。また、内側と外側の二重ガラスの構造により、魔法瓶のようにビル内部の熱や涼しさを保つことができます。
 
(4)賃料水準
「上海センター」のオフィス賃貸代理店によりますと、賃料水準は14~20元/日/㎡と「上海環球金融中心」の賃料水準と同程度、若しくは少し高い水準となる見込みのようです。なお、既にテナントの募集は始まっており、引渡し予定は2015年5月頃を予定しています。「上海センター」では、入居希望企業には、日系企業含め多くの外資系企業から引き合いが来ているとのことです。
 
○終わりに
今回、「上海センター」が完成することにより、陸家嘴地区には上海市内で高さトップ3(「上海センター」、「上海環球金融中心」、「金茂タワー」)の高層ビルが林立することになり、新たなランドマークが形成されます。
20年前の外灘からの眺めには、完成したばかりの「東方明珠」があるだけで、高層ビルはほとんどない平坦な風景であった為、久しぶりに上海に来る出張者や観光者には上海の変貌に驚きを隠せない方が多いようです。
さらに、浦西地区の長寧区には商業施設のオープンが控えており、2015年末にはディズニーランドの開園が迫ってきています。昨今GDPの増加率が減少している上海ですが、現地にいると、まだまだ上海経済が衰えは感じられません。
上海に来られたことがない方はもちろん、一度来たことがある方も是非上海にお越し頂き、上海経済の勢いを感じてみては如何でしょうか。
 
 
以上
上海駐在 小林邦寛
 
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 
 
 
 

 

 

 

 

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号