上海駐在レポート

第 43 回 「中国での銀行口座の運用について」

第 43 回 「中国での銀行口座の運用について」

中国で取扱う法人用の銀行口座は日本と違い、使途や目的により細かく分類されています。会社設立当初に作成する外貨建て資本金口座、決済口座、人民元建て基本口座、一般口座等の口座の種類や用途については、過去のレポート「中国の銀行口座(法人用)について」(下記URL参照)にて取上げておりますのでご参考頂ければと思いますが、中国国内に進出を検討する企業にとって中国における口座の取扱いについては十分理解しておく必要があります。
(参考URL:http://www.tomin-bc.com.cn/topics/address/102.html)
今月のレポートでは、一般的な銀行口座間における資金の流れや、上海自由貿易試験区において新たな試みとして制定された元転後支払待ち口座の用途・メリット等についてご紹介させて頂きます。
 
○ 口座間における資金の流れ
以下は日本、中国における各口座間の資金の流れについて図にしたものです。
 
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主に下記①~③が一般的な企業活動における口座間の資金の流れとなっています。

①日本本社からの送金(資本金)⇒外貨資本金口座⇒人民元に両替の上、人民元基本口座or一般口座へ振替⇒経常取引による人民元建て支払い
②日本本社からの送金(親子ローン)or日本国内銀行からの借入(オフショアローン)⇒外貨借入金口座⇒人民元に両替の上、人民元基本口座or一般口座へ振替⇒経常取引による人民元建て支払い
③輸出取引等による外貨決済口座への入金⇒外貨決済口座より外貨建て支払い

 
尚、資本金については、現在では、人民元建て資本金口座を作成することも可能となっていますが(図④)、外貨資本金口座は複数開設可能であるのに対し、人民元建て資本金口座は1口座のみ開設可能なため、この点については注意が必要と言えます。
その他にも、営業許可取得前の会社設立準備に使用する目的として「前期費用口座」を利用した資金決済方法もあります(図⑤)。この口座は現地法人の名称事前許可通知書受領後に作成することが可能な口座で、営業許可取得後には資本金口座に振替えることとなります。30万米ドルまで預入可能で、主な用途としては、家賃の保証金やオフィス内装費用、備品等の購入に使用されます。
しかし口座の作成や、口座活用後の資本金口座への振替等の手続きが煩雑であることから、実務上、前期費用口座を作成する企業はほとんどなく、日本本社や(費用が小額であれば)設立代行会社が費用を立替えるケースが一般的なようです。また、日本本社が立替えした場合、これまでは現地法人設立後に日本への立替送金が認められず立替えした資金を回収できないケースが多かったのですが、国家外貨管理局が2013年7月に公布した『サービス貿易外貨管理法規の印刷・配布についての通達』(匯発[2013]30号)により、5万米ドル以下の立替送金については銀行の書類審査不要で日本への送金が認められることとなったため、前期費用口座の活用意義は益々減少しています。但し、5万米ドル以上の立替送金の場合には銀行の書類審査が必要であり、かつ立替期間が12ヶ月を超えてはならないと規定されていますので、注意が必要です。
 
○ 元転後支払待ち口座の取扱いについて
現行の外貨管理規定によれば、手元準備金(1回5万米ドル以内、月額10万米ドル以内)を除き、外商投資企業の元転は、実需に基づき、必要な額だけ元転することができます。これに対して、上海市自由貿易試験区では、2014年2月28日付の『外貨管理による試験区建設指示の実施細則』(以下、実施細則という)により、外貨資本金を自由に元転することが可能となりました(元転後支払待ち口座への入金)。
この実施細則によると、現地法人の判断で実需に関係なく元転することができ、為替リスクのコントロールを図ることが出来ます。また、従前は毎年の決算書上において、決算日当日のレートにより外貨資本金口座の元換算の金額が決定しますが、元転待ち支払口座へ入金しておくことにより毎年の決算日の評価替えが不要となる為、決算書上、為替の変動により資本金の金額が変動するということがなくなります。
元々上海自由貿易試験区では、外貨資本における金融面の緩和等を試験的に行っており、今回の実施細則も2014年8月4日には新たに試行地域を拡大しています(『一部の地区で外商投資企業外貨資本金元転管理方式の改革試行を展開することに関連する問題についての通達』(『36号通達』))。今後、実施細則が効果的であると判断されれば全国へと拡大する可能性もあり、今後の動向には注目していきたいと思います。
(上海自由貿易試験区については、http://www.tomin-bc.com.cn/topics/china/393.htmlをご参照下さい)
 
○ 終わりに
中国では口座からの出金は実需に基づくことが原則であり、規定によって厳しく管理されています。しかし、上記に挙げた「元転後支払待ち口座」の試行にもあるように、口座の運用については徐々に規制が緩和されているように見受けられます。中国国内外における口座の運用について、新たな政策や変更点等あれば引き続き紹介していきたいと思います。
 
 
 
以上
上海駐在 小林邦寛
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 
 
 
 

 

 

 

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