上海駐在レポート

第 42 回 「中国における外商投資企業の企業名称について」

第 42 回 「中国における外商投資企業の企業名称について」

中国における企業設立の手続きは社名の申請から始まりますが、中国での社名の構成は日本と違い、各種法令により厳密に管理されています。また、この点をよく理解せずに設立手続を行ってしまうと、設立手続きの最初の申請から時間が掛かってしまいます。そのため、設立手続を円滑に行うには企業名称におけるルールについてもよく理解しておく必要があります。
今月は、外商投資企業が中国において申請する企業名称の構成やルール、実務上の注意点等についてレポート致します。
 
○ 企業名称の構成
企業名称の管理は、主に「企業名称登記管理規定」(1991年5月発布、2012年11月改定、以下、「管理規定」という)及び「企業名称登記管理実施弁法」(1999年12月発布、2004年6月改定、以下「実施弁法」という)に基づき行われています。
企業名称の構成については、原則として①企業所在地の省(自治区及び直轄市を含む)、市(州を含む)又は県(市管轄の区を含む)の行政区画名②屋号(又は商号)③業種又は営業上の特徴④組織形態により順次構成されなければならないとされています(管理規定第7条及び実施弁法第9条)。但し実務上、外商投資企業の場合には、行政区画名は屋号や業種の後ろに付けることも認められています。
【企業名称の構成】
行政区画 + 屋号 + 業種 + 組織形態
※外商投資企業の場合、以下の構成も可能
屋号 + 業種 + 行政区画 + 組織形態
屋号 + 行政区画 + 業種 + 組織形態
 
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上記の構成ルールに基づき、弊行上海現地法人の「都民銀商務諮詢(上海)有限公司」を例に見てみると、「都民銀」が屋号、「商務諮詢」が業種、「(上海)」が行政区画、「有限公司」が組織形態となります。
また、この中で一つでも上記内容が欠けていると登記・登録は認められないことになります(例えば、都民銀有限公司や都民銀(上海)有限公司等は不可)。
さらに、下記構成ごとに細かく分析してみたいと思います。
(1) 屋号
中国での企業名称は原則漢字を使用しなければなりません(管理規定第8条及び実施弁法第8条)。日本での企業名が漢字であれば基本的にはその漢字を使用し、カタカナや英語であれば似たような意味の漢字を使うか発音が似ている漢字を使って社名を考えるのが一般的です。しかし、当該企業名称を適切に翻訳した外国語であれば、外国語に翻訳した名称も使用することが認められています。
「都民銀商務諮詢(上海)有限公司」では、「Tomin Business Consulting Shanghai Co.,LTD」という英文名称を使用していますが、この名称を用いて、銀行口座名義や印鑑(英文名称あるもの)、名刺やHP等に使用することもできます。
但し、英文名称の手続きについては、管理規定第8条2項では登記主管機関に登記・登録しなければならないとする一方、実施弁法第8条第2項では工商行政管理機関に報告し、登記の審査・承認を受ける必要がない旨規定しています。この点、実務上では実施弁法に基づき、審査、承認、登録は必要なく自由に決定することが出来るとされています。
その他にも、登記主管機関の管轄区域内においては、既に同じ名前の社名が存在する場合には使用することが出来ない(管理規定第6条)といったルールもありますので、手続の際には事前に複数の候補を準備しておく必要があります。
 
(2) 業種
管理規定第11条及び実施弁法16条では、企業名称中の業種表記は経営上の特徴を反映する用語でなければならず、企業の経営範囲と一致しなければならないと規定しています。弊行上海現地法人の場合、「企業管理や投資等のコンサルティング業務を経営範囲とする」企業であることから、ビジネスコンサルティング業務を意味する「商務諮詢」という業種表記をしておりますが、銀行業務は経営範囲には含まれていない為「銀行」という業種を企業名称中に含めることは出来ません。
 
(3) 行政区画
企業の名称には、当該企業所在地の県級以上の行政区画名を表記しなければならないとされています(管理規定第7条及び実施弁法第11条)。また、行政区画の代わりに「(中国)」と表記するケースがありますが、その点、実施弁法第10条では「外国投資独資企業及び外国側当事者が株式又は出資持分を支配する外国投資家企業は名称中に「(中国)」という文字を使用することが出来る」とし、実施弁法第13条では以下の条件のいずれかに該当する企業法人であれば行政区画を含まない企業名称を使用することが出来ると規定しています。
① 国務院が承認するもの
② 国家工商行政管理商局が登記・登録するもの
③ 登録資本(又は登録資金)が5,000万元を下回らないもの
④ 国家工商行政管理商局に別段の定めのあるもの
「都民銀商務諮詢(上海)有限公司」の場合、所在地が上海市黄浦区に位置する為、「都民銀商務諮詢(黄浦区)有限公司」とすることは規定上可能ですが、この場合、一目では企業の所在地が分からない等実用性に乏しく、通常は省や直轄市を表記するケースが一般的です。また、「(上海)」の代わりに「(中国)」という文字を使用できるかどうかという点については、外資独資企業の為、「(中国)」自体を使用することは可能ですが、登録資本金が25万米ドルであることから「(上海)」を省略することは出来ない為、結論としては不可となります(上記①②④は認められれば可能ですが、通常認められるのは容易ではありません)。
 
(4) 組織形態
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最後に組織形態を表記します。外商投資企業の組織形態は、独資企業、合資企業、合作企業のいわゆる三資企業といわれ、その多くは現在の会社法上の分類では有限責任会社(中国語で有限公司または有限責任公司と表記)に当たります。また三資企業の他、株式会社(中国語で股份公司または股份有限公司と表記)による形態も認められていますが、有限責任会社に比べ、最低資本、出資人、設立認可等について厳格な要件が課せられている為、外資株式会社の設立例は多くありません。
 
○ 終わりに
以上のように、企業名称の構成ごとにルールを述べてきましたが、企業によっては規定に捉われない名称もいくつか見受けられます。例えば、屋号にアルファベットや数字、外国国家(地域)が表記されているケースです。管理規定第9条により、これらを名称中に表記することは原則認められていませんが、企業名称が商標となっている場合にそれをもって当局に認められたといった特殊なケースもあります。また、中国では地域等により対応が異なることや、法令等の改正もしばしばあります。そのため、規定に捉われない企業名称を希望する場合には、相当な理由を持って、その都度関係当局と相談する必要があります。
 
 
 
以上
上海駐在 小林邦寛
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