上海駐在レポート

第 37 回「春節に向けて」
第 37 回「春節に向けて」
新年おめでとうございます。1/1、中国でも様々な場所で新年を祝う催しが行われました。しかし、中国でのお正月と言えばやはり「春節(2014年は1/31~2/6)」です。近年、日本ではお正月の盛り上がりが薄れてきている印象ですが、中国では1月に入ってから、一般の住居、商店、ホテル、商業ビル等様々な場所で飾り付けを行い、街の雰囲気をガラリと変え、春節に向けて準備が進められています。
そんな中、春節を地方の実家で迎えようと多くの人々が帰省する為、1月中旬頃から交通量が非常に多くなります。この現象を「春運」と呼び、中国では毎年、社会問題として取り上げられています。
今月のレポートでは、中国の特色の一つ「春運」についてご紹介したいと思います。
 
◎ 春運とは
 
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<中国 交通運輸局統計データより作成。>
   春運は、毎年春節の前後40日間(2014年は1/16~2/24)にかけて起き、人類最大の人口移動だと言われています。2013年の春運期間中には延べ34億人もの中国人が北京、上海、広州等の大都会から東西南北の故郷へ向かい、休み明けには、働き先の大都会へUターンしたそうです。13億人の国民が平均2.6回移動した計算になり、また1日平均8,500万人が鉄道や自動車等の交通機関を利用したことになります。近年は中国人だけでなく海外旅行者数も増え、総輸送客数は年々増加しています。
歴史を辿ると、春運の発生は1978年の改革開放政策によって自主就業を掲げて雇用の流動化を図った為、仕事の多い地区(主に、北京や上海、広州等の沿岸部)に移住した人口が年末の帰郷の為に一斉に移動することが原因であったと言われています。
 
◎ 春運の問題点
春運期間中、鉄道機構は輸送能力を最大限発揮するよう尽力し、新たに増加した輸送能力を生かす一方、既存の輸送能力についても最大限発揮するとしていますが、毎年、以下の問題が発生します。
・ 切符購入難
この時期になると切符の値段が高騰します。これは鉄道会社による価格のつりあげがある為と言われています。また人員を組織して、大量に切符を予約し、別の客に高値で売りさばく黄牛(ダフ屋)と呼ばれる犯罪が横行します。本物だけでなく偽造の切符も混じって売られる為、検査や見つかったときの対応等でその分負担が増えます。近年では切符購入に実名制を導入し転売できなくする等、対策は取られていますが職員と結託している場合もあり効果は上がっていません。
・ 治安混乱
移動する人が多くなる為、そこにつけいった窃盗、強盗、詐欺等の犯罪や危険物(可燃品等)の持ち込み等が増えます。また鉄道会社が利益をあげる為に、便数の水増し、定員を超える乗車、職員の酷使等することにより、事故が起こりやすいと言われています。
・ 情報格差の広がり
最近ではインターネット等で切符を購入することが出来るようになりましたが、その反面、世代間の情報格差も顕著になってきました。若者はスマートフォンやパソコンにより手軽に購入することができますが、パソコンに触ったこともない中年の出稼ぎ労働者たちは数時間切符売り場に並ぶしかありません。売り切れというケースもあり、年に1度の帰省を諦めなければならないこともあります。
 
◎ 春運について考える
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混雑する上海駅の様子
前述のように、中国では社会問題として連日のように春運関係のニュースがトップニュースとして報じられます。また、帰省の切符を買うために70時間ほど窓口に並んだ出稼ぎ農民、鈍行列車で30時間立ちっぱなしで帰省する学生、数千人がバイクで群れをなして帰省する鉄騎軍団等、日本ではあまり耳にしない話も多く取り上げられ、非常に驚かされます。
では、なぜ中国の人々はこんなに苦労してまで故郷へ帰ろうとするのでしょうか?それが中国の長い歴史、文化、伝統なのか、それとも強い家族意識によるものなのか真相は分かりませんが、春運に関する報道等を聞くと、中国人の「何が何でも故郷に帰る」という強い意志が伺えます。
そもそも春運は多くの人が生活の場を都市に移したからこそ発生した現象です。また都市化現象は都市の工業化があってこそのものであり、中国の目覚しい工業化の発展は農村からの出稼ぎ労働者(農民工)を抜きにしては考えられません。しかし、中国の経済的大躍進を支える農民工は都市で働くものの、生活の場を都市に移動することは出来ません。これは、中国では農民戸籍と都市戸籍の区別があり、農民戸籍の人々は都市では教育、医療、社会保障等の行政サービスを受けることが出来ないからです。近年では都市と農民を統一したサービスが受けられるよう制度が一部整ってきているとのことですが、現在でも子供や年老いた親を故郷に残して働く、単身で働く、夫婦それぞれ別の都市で働くといったことも少なくないようです
そういった背景を踏まえると、春運という現象は、中国国内各地域間のアンバランスな状態を視覚的に映し出しているものと言えます。しいては、地域間の調和の取れた経済発展の実現が春運の根本的解決に繋がるものと思われます。
 
◎ 終わりに
春節になると、多くのお店も休みになり、街は閑散とすると言われています。小職も春節の間は上海市だけではなく、春運という現象を体験すべく鉄道やバスを利用し、他の省にも赴き、各地方での春節の雰囲気を味わいたいと考えています。
春節での中国国内の移動は非常に苦労が多いものと想像出来ますが、貴重な中国生活の中で様々な経験をし、引き続き「春節」について、皆様に還元できればと思っております。
 
 
 
 
以上
上海駐在 小林邦寛
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