上海駐在レポート

第 35 回「11月11日」
第 35 回「11月11日」
「11月11日」、日本では多くの団体、企業がこの語呂のいい日に、様々な記念日を制定しています。また、某有名お菓子メーカーでは「ポッキー&プリッツの日」と謳い毎年キャンペーンを実施し、認知度向上を図るなど、多くの企業にとってこの日は売上増加のためのチャンスとも言えます。
さて、ここ中国では「11月11日」というと「独身の日(中国語では「光棍節」)」となります。中国でもまた、消費を盛り上げようと年に一度、この日に力を入れているとの話を聞きました。
今月は、中国ならではのスケールの大きいイベント「独身の日」についてレポートしたいと思います。
 
◎ 「独身の日」由来
「1」が4つ並ぶこの「独身の日」は、「1」が独り身を表すといった意味に由来するもので、1990年代に南京市の学生の間で始まったと言われています。この流れは時代と共に全国へと広がり、現在では中国各地で多くの若者がこの日を祝うようになりました。
また、「独身の日」には2つの祝いの意味が含まれており、1つは「独身万歳」とのことから“独身を楽しむ日”、もう一つは「独身よ、さらば」とのことから“独身に別れを告げる日”といった意味です。
 
◎ 「独身を楽しむ日」
「独身は出かける予定もなく、独りで家でネットをする」といった発想から楽しく買い物をしてもらおうと、ネットショッピングで大セールが行われます。これは、中国ネット通販最大手の「淘宝(タオバオ)商城」が2009年に最大級のセールを行ったことから始まったもので、今では他のネット通販業者も続々と追随し、独身者に限らずネット通販を楽しむ習慣が定着しました。
驚くべきことは1日の取引量とその売上です。中国各紙によると、2013年の独身の日の取引件数は1億8,800万件、取引額は350億1,900万元(約5,600億円)で、これは前年同日(191億元)を大きく上回り、1日の取引額としては世界最高を記録したとのことです。地域別取引額としては、浙江省、広東省、江蘇省、上海市、北京市の順で多く、所得水準の高い沿海部の都市が上位に並んでいます。日本のネット通販サイト大手「楽天市場」の1ヶ月の平均売上が約1,400億円であることから見ても、中国の「独身の日」における売上がいかに多いかが分かり、改めて中国という国の規模の大きさを実感させられます。
 
◎ 「独身に別れを告げる日」
独身に別れを告げると言えば結婚です。「独身の日」には、ここ上海市でも、普段の10倍以上、実に5,000組以上のカップルが婚姻登録を行うそうです。今年は、婚姻登録数の増加を見込み、上海市各地の婚姻登録所では受付開始時間を午前9時から午前7時に繰上げて対応したそうですが、一部の婚姻登録所では午前3時頃から列が出来始め、午前7時には既に長蛇の列が出来ていたそうです。
また、別れを告げたくても告げられない人の為に、結婚恋愛博覧会と称する大規模なお見合い大会「万人相親会」が上海市で開催されています。今回が第4回となるこのお見合い大会は、毎回数万人規模の参加者が殺到するとのことですが、今回から年齢制限が60歳までに緩和され(従来は 35歳まで)、結婚を希望するより多くの独身男女が参加できることとなりました。中には自分の子供の為に来ているのか、自分の為に来ているのか分からない人もいたそうです。
なお、お見合い大会の会場は、年代別に「若者たちの出会いの場」「1970年代・1980年代生まれ募集」「より充実した毎日を。中年世代」「人生の秋を生涯のパートナーとともに」など特別コーナーが設けられ、一人でも多くの参加者が良縁に恵まれるように配慮されたものとなっているとのことです。独身である小職も、本レポートを執筆しつつ、来年まで良縁がなければ積極的に参加してみようかと思いました。
 
◎ 「独身の日」に見る中国の可能性
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中国の独身者数は現在1億8,000万人に達しており、その数は年々増加傾向にあると言われています。今後ますます少子高齢化の問題が深刻となる中、「独身の日」というイベントの定着がプラスの経済効果を生み出している点は興味深いところがあります。また、「独身の日」の巨額の売上は、中国市場に大きな消費潜在力があることを証明していると言えます。
ここで、EC市場(インターネットを利用した電子商取引市場)の成長性に触れたいと思います。2013年初めの中国における小売売上高に占めるオンライン販売割合は、前年の4.3%から6.3%へと増加しました。中国、情報工業省によると、2015年までに電子商取引額は18兆元(約288兆円)、小売業全体の売上の9%超を占めると見込んでいます。また、アメリカの某コンサルティング会社によれば、中国のオンライン販売は2015年までに年率32%の成長、市場規模は5,000億ドルに達すると予測されています。
中国農村部でもネット商店は活況にあると言われています。中国国内のオンラインショップ700万店の内22%以上が、登録地が農村部であるとのことです。農村部からの労働力の流出が深刻な問題となっている中、遠隔地でも収入が得られるオンラインビジネスは農村部の人口流出を鈍化させ、雇用創出に寄与する可能性を秘めています。しいては中国の急速な都市化の負担が軽減される可能性もあり、経済のバランスを取り戻すきっかけとなるかもしれません。
 
◎ 終わりに
今回、「独身の日」という題材をレポートし、また、中国での2ヶ月足らずの生活を通して、中国について一つの言葉が浮かび上がりました。それは、「極端」という言葉です。
例えば、「春節や国慶節など、休暇は長期でまとまっている」「出てくる料理の量が多い」「公共サービスは非常に安く、ブランド品など高いものは高い」「現在建造中の上海センターなど、世界一と謳うものが多い」、また今回の題材においても、「1日あたりの取引件数、取引額」「お見合い大会の参加者数の多さ」など、極端な数字が目立ちました。
今回のレポート執筆を通して、こういった中国のある種の特性を感じ取ることができました。引き続き多くの中国文化に触れ、中国ならではの文化・習慣等をレポートしていきたいと思います。
 
 
 
 
(1元≒16円)
以上
上海駐在 小林邦寛
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