上海駐在レポート

第 34 回「帰任報告 ~上海生活総括~」
第 34 回「帰任報告 ~上海生活総括~」
上海での3年余りの駐在生活が経過し、この度、日本に帰国することとなりました。この3年間を振り返ってみると、様々な出来事や事件があり、その度に変わる中国の投資環境を、身を持って知ることができたとしみじみと感じます。
 
2010年10月、小職が赴任した当初は、上海万博の開催中であり、至るところに万博の看板やオブジェが掲げられ、上海は街中活気に満ち溢れていました。小職自身、二回ほど見学に行きましたが、会場は「人、人、人」といった感じで、一つのパビリオンに入るために何時間も並んだことをよく覚えています。また、どの様な状況下においても平気で何時間も会話し続ける人々の姿や、会場付近で平然と偽物グッズを販売している光景を目の当たりにし、中国人のたくましさを感じたことも記憶に新しいです。
当時の中国は二桁の経済成長を遂げており、日本では第4次対中投資ブームとも呼ばれていた時代でした。多くの日本企業が販売会社や生産会社(工場)を作るなど、直接投資の話もよく聞かれ、正に中国経済の景気の良さを実感することができた時期であったともいえます。社会に出て以降、日本経済の不況を目の当たりにしてきた小職にとっては、この中国経済の活況振りには衝撃を覚えさせられたものです。
 
中国の活況を垣間見るといった観点でいえば、個人的には、「偽物市場」が印象に深く残っています。かつては、淮海路と呼ばれる上海の目抜き通りに構えていた巨大偽物市場は、
113.jpg
<偽物市場の様子>
現在では閉鎖となってしまったものの、偽物市場は上海各地に散り散りとなり、今でも存在し続けています。特に、東部では「上海科技館駅地下」、西部では「虹橋真珠城」が有名で、そこでは日々、ブランドの模倣品を販売する店舗がところ狭しと軒を連ねています。
 小職も観光案内で何度となく訪れましたが、客引きは外国人を見かけると、「トモダチ」、「シャチョウ」、「ミルダケ」などと声を掛けてきては、店に引き寄せるためにしつこく後をつけて来て、その商売魂を遺憾なく発揮していました。接客にしても、堪能とまではいかないものの、日本語、英語、時にはその他の言語までも操り、巧みに値段交渉をしてくる姿を見て、「どこでそのスキルを身に付けたのか」とただただ不思議に感じ、驚かされたものです。
赴任期間の後半には、2012年9月の反日デモを始めとして、大気汚染問題、鳥インフルエンザの発生など良くない話題が多く挙がりました。こういった話題に、中国人スタッフ・ワーカーなどの人件費の高騰、中国企業との競争の激化、合弁相手との合弁期限の到来などが相まって、「中国ビジネスからの撤退」という話も多く聞かれるようになりました。当地にいて、事業環境の変化を身を持って感じさせられたことも事実です。
ただし、撤退は進出と比べてもはるかに難しく、十分に検討することが必要な作業といえます。特に今後も中国を市場として捉える場合、撤退後の中国展開についても十分に考慮しなくてはなりません。そういった点を踏まえると、話題に踊らされるのではなく、日本サイドの経営者が日頃から当地を訪れ、実際の事業環境を常に把握しておくことが非常に重要であると深く感じさせられました。企業によっては、「事業を当地の責任者(総経理)に任せきりにしている」といったケースも頻繁に見受けられ、この点は改善が必要な事項であり、中国ビジネスの難しさの一つでもあるように思いました。
 
更に業務面において、中国で困らされることといえば、頻繁に変わる外貨管理や法制度およびその運用が挙げられます。時代の流れと共に徐々に緩和してきているとはいえ、中国では、国際
114.jpg
<上海金融街の風景>
収支の均衡や為替レートの安定のために、厳格な外貨管理制度が布かれています。また、経済の発展に伴い 労働関連、貿易関連、投資関連等、様々な分野における法律・規制が頻繁に変わります。その上、こういった法律・規制においては、地方毎に運用が異なるケースも多々あり、中国ビジネスに携わる者にとって頭を悩ませる種となっている訳です。
特に、普段より、会社経営から営業・労務等、全ての業務を自ら行わなければならない中小企業の総経理などからしてみれば、これはたまったものではありません。よって、帰国後はこういった中小企業のお客様を、少しでもサポートしていけるよう、心掛けていきたいと考えております。
 
中国は巨大な国です。国土面積が日本の約26倍もあるため、当然といえば当然なのですが、それ以上にスケールの大きさの様なものを感じさせられます。3年間という短い期間ながらも、この大国の変化を身近で感じることができたこの3年間は、非常に有意義な期間でした。
この大国がどのように発展を遂げていくのか、どのように変わっていくのかを、今後も注目せずにはいられません。

 

以上

上海駐在 小原 英

お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号