上海駐在レポート

第 25 回「上海外高橋保税区、上海外高橋集団(啓東)産業園」

 第 25 回「上海外高橋保税区、上海外高橋集団(啓東)産業園」

    2012年10月号のレポートで、外国投資を促進するために設けられた工業エリアである「開発区」についてご紹介しましたが、中国には、この開発区に保税(輸出入に際し、通常であれば納めるべき各種税金が留保されること)機能が付与された「保税開発区」と呼ばれる対外開放地域が存在しています。


    この保税開発区の中でも、最も歴史が古いのが「上海外高橋保税区」であり、1990年に設立の認可を得てから今日まで、貿易商社を中心とした外国企業の投資誘致や貿易の促進に多大な貢献をしてきました。

    今回は、その上海外高橋保税区の開発、管理、企業誘致を担っている「上海外高橋保税区聨合発展有限公司」の案内で視察した「上海外高橋保税区」及び「上海外高橋集団(啓東)産業園」の概要、投資環境等についてご紹介したいと思います。なお、「上海外高橋保税区聨合発展有限公司」と当行100%出資の現地法人「都民銀商務諮詢(上海)有限公司」は、中国ビジネスにおける包括的業務提携を結んでいます。
「保税開発区」とは
    保税開発区とは、その名の通り、保税措置を提供することを目的とした開発区であり、その特徴や機能、設立根拠規定に応じて、「保税区」、「輸出加工区」、「保税物流園区」、「クロスボーダー工業区」、「保税港区」、「総合保税区」の6種類の保税開発区が設置されています。
    保税開発区での輸出入取引においては、海外から区内に貨物が搬入された段階では輸入通関が行われず、税関への届出(入境登録。「一次通関」と呼ばれることもあります)のみが行われます。この段階では保税措置が取られ、輸入に掛かる税金の課税も行われません。その後、中国内の一般区に貨物が搬出された場合、この時点で輸入と見なされ、輸入通関(「二次通関」と呼ばれることもあります)及び輸入段階の税金の課税がなされる形となります。逆に輸出取引においては、中国一般区から保税開発区に貨物が搬入された段階で輸出と見なされ、輸出通関が行われます。この場合、保税開発区から海外へ貨物が搬出される際は、輸出通関ではなく、税関への出境登録のみとなります。
    この様に保税開発区は、税関による特別な政策が取られているエリアであり、保税開発区を活用することにより、「区内と海外とを搬出入する貨物を保税扱いにできる」、「各種税制の優遇を受けることができる(多くの保税開発区では地方の財源をもとに税金の還付を行っており、税制面での優遇を受けることができます)」などといったメリットを享受することが可能となります。ただし、特殊なエリアとはいえ、中国内の一部であることには変わりなく、保税開発区内の企業には一般区と同様の税制が適用されていますので、この点は注意が必要です。
中国進出について

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<区内はフェンスで囲まれ、外部と隔離されている>

 

    なお、前述の通り、保税開発区は現在6種類ありますが、例えば「輸出加工区であれば、原則、区内には輸出加工に特化した企業のみが入居でき、搬入可能な貨物も区内での加工生産に使用されるものに限定されている」、「保税物流園区は物流機能に特化したエリアであり、区内での加工業務は、梱包や分類など簡易なものを除いて不可」といったように、それぞれ異なる機能を有しています。この様な、「保税開発区の種類によって特性が異なる」といった複雑な状況については、今後、保税開発区の種類を、保税開発区の中でも最も広域な機能を有している「総合保税区」へと統合していくことにより解消していく方針にあるようですが、現状では、進出を決める際には、十分にその特性を吟味する必要があるといえます。
上海外高橋保税区
    「上海外高橋保税区」は、1990年に認可を受けた第一号の「保税区」であり、経済都市である上海に位置し、交通の要所であることからも、全国の保税区の中でも最大の発展規模を誇っています。
    上海浦東新区の東北部、揚子江下流のエリアに位置し、上海外高橋港に隣接するという地理的優位性は、貿易業・物流業の発展に寄与しており、インフラ面などの機能が整っていることからも、入居企業は現在でも年々増え続けています。なお、現在は13,000社を超える企業が進出しているとされていますが、入居企業の内約70%近くが貿易商社であることもその特徴の一つといえます(外国企業においては、2004年に『外商投資商業管理弁法』が公布されるまでは、保税区に限定して貿易会社を設立することが認められていたため、このことも保税区に貿易商社が多い原因の一つです)。また、進出企業が、パナソニック、日立、シャープ、東芝、ソニーなど誰もが知っている有名企業から、中堅中小企業まで多岐に亘っていることも特徴的です。
    外高橋保税区内の企業は、海外との貿易を自由に行えるだけでなく、中国国内での販売活動にも従事することができます。また、区外(一般区)に支店(分公司)を設立することも可能となっており、実務上は、外高橋保税区に進出している貿易会社の大半は区外に支店を構え、主にそこで営業活動を行っています。ただし、こういったケースにおいても、納税は本店登記地である保税区で行う必要があり、発票(領収書)の発行についても外高橋保税区内の「交易市場」と呼ばれる場所で行わなくてはなりません。「交易市場」とは、(前述の通り)外国企業が保税区に試験的に貿易会社設立を認められていた時代に、この市場を通して貿易取引を行うことが認められていたものであり、その名残を受け、現在でも、保税区内企業は発票の発行をこの市場で行うこととされています。なお、外高橋保税区内には3箇所の交易市場が設けられています。
    最後に、外高橋保税区に進出することの主なメリットについてですが、保税開発区の最大の特徴である「貿易取引において、保税措置を享受できること」のほか、新規進出企業においては企業所得税(日本の法人税に相当)や増値税(日本の消費税に相当)などの税金の補助を受けることができる点が挙げられます。
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<上海外高橋保税区>
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<交易市場の発票発行機>
上海外高橋集団(啓東)産業園

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出典:上海外高橋保税区聨合発展有限公司
    「上海外高橋集団(啓東)産業園(以下、産業園)」は、「上海外高橋保税区聨合発展有限公司」が、営業拠点の更なる拡張のため、江蘇省啓東市に出資・開発を始めた工業不動産プロジェクトです。この産業園は、啓東市の東沿海部の「啓東濱海工業園(啓東市の開発区)」内に位置しており、2008年より着工を開始、敷地総面積は5.33k㎡、現在では既に複数の企業が入居しています。
    産業園への入居企業においては、入居後5年間の企業所得税の補助(二免三減)や、年間納税額が多額の場合、納税金額に応じた税金の還付を受けることができるといったメリットだけでなく、設立申請手続きの支援や、プロジェクト内容によっては、土地使用権取得代金の優遇、各種補助金の受給が可能などといった優遇政策を享受することができます。
    啓東市は、江蘇省の最東端に位置する沿海都市で、上海とは崇明島を挟んで隣接しています。上海からの直線距離は約50km、2011年に崇明島-啓東間をつなぐ「崇啓大橋」が開通したことにより、現在では上海中心部より、車で1時間
半程の距離となっております。中国でも初期に開放された沿海対外開放地域の一つである啓東は、中国四大漁場を有しているほか、電動工具の生産や、建築業が盛んなことでも有名です。
上海からのアクセスの良さ・黄海に接する物流面でのメリットなど、立地における優位性や、広大な土地が未だに余っていることなどを考慮すると、啓東は今後注目されるエリアの一つとなってくることでしょう。
【上海外高橋集団(啓東)産業園概要】
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最後に
    1990年に「外高橋保税区」が設置されてから、既に20年以上の月日が経過しています。この間に、外高橋保税区は数多くの外国企業を誘致し、貿易・物流・生産面など各方面で多大な成果を上げ、中国の経済発展に寄与してきました。しかし、こういった旺盛なニーズがある反面、進出する土地が少なくなってきているのも現状です。これは外高橋保税区に限ったことではなく、上海近郊のアクセスの良い地域においても、土地は飽和状態になりつつあります。そこで、新たに開拓されたエリアが、前述にてご紹介させていただいた「上海外高橋集団(啓東)産業園」です。
    啓東は、現在急ピッチで開発を進めている地域であり、まだ未開拓な部分もあるように感じましたが、その潜在力には目を見張るものがあります。「崇啓大橋」の開通によって上海からのアクセスが格段に良くなったことからも注目を集め始めています。新たに中国進出をご検討の際は、一度視察されてみてはいかがでしょうか。

 

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