上海駐在レポート

第 21 回「中国でのオフィスの賃貸について」

第 21 回「中国でのオフィスの賃貸について」

    外国企業が中国で現地法人を設立しようとする場合、まず必要となる事項の一つがオフィス選びです。当地の中国人スタッフの話を聞いていても、「オフィスはやはりきれいなところが良い」とか、「通いやすいエリアであることが、仕事選びの基準の一つ」といった意見も多く、オフィス選びは、優秀なスタッフを採用するためのポイント、ひいては会社経営が成功するためのポイントの一つと言っても過言ありません。
    今回のレポートでは、オフィス選定時のポイントや、賃貸契約における注意点などにスポットをあて、「中国でのオフィスの賃貸について」ご紹介したいと思います。

 

オフィス選定について
    オフィスを選定するにあたってまず初めに考慮することは、やはり「場所」と「賃料」です。
例えば上海においては、日系企業が好むエリアとして、「古北・虹橋エリア」、「中山公園エリア」、「徐家匯エリア」、「静安エリア」、「盧湾エリア」、「陸家嘴エリア」といったエリアが挙げられ、それぞれオフィス街であったり、百貨店やモールが立ち並ぶショッピング街であったりと特徴は異なりますが、共通して言えるのはアクセスが良い点です。特に上海では地下鉄網が整備されており、多くのスタッフは通勤に地下鉄を利用して出勤することから、地下鉄の駅から近い立地が好まれます。また取引先への交通の便の良さや、日本からの出張者が頻繁に来る場合、空港からのアクセスが良いことなども考慮すると良いでしょう。
    次に「賃料」についてですが、賃料は一般的に1㎡、1日あたりの金額で表示されます。例えば1㎡、1日あたりの金額をAとすると、1ヶ月の賃料は、「A×建築面積×365日÷12」で求めることができ、これに管理費(一般的に1㎡、1ヶ月あたりの金額で表示。賃料に含まれるケースもあります)を含めた金額が1ヶ月あたりの賃貸総額になります。ただし、ここで注意しなくてはならないのが、「建築面積」についてです。中国の建築面積は、柱なども含むグロスの面積であり、実用面積はこの面積から3~4割程度差し引いたものとなってしまいます。また、オーナーが提示してきた面積と実際の面積が異なるというケースも頻繁にあり、オフィス視察の際は、実測を行うと良いと言えます。
    なお、賃貸価格相場についてですが、上海を例にすると、旺盛な外資企業の進出もありオフィスビルの需要は年々増加の傾向にあり、賃貸価格も年々値上がりしてきています。売り手市場であるため、賃貸価格の上昇はやむを得ないとも言えますが、値上げの上限を定めるようオーナー側と交渉しておくなどのリスクヘッジを取っておくことも一つの有効な手段であると言えるでしょう(ただし実務上、大規模なオフィスの賃貸を除き、値上げ上限を定めることはオーナー側が同意しないケースが大半の様です)。
    また、近年では、中国への進出当初は、既に内装が完了してあり、家具や備品などの設備も用意されている「レンタルオフィス」を利用する企業も増えてきている様です。「レンタルオフィス」は、内装・設備が整っているだけでなく、「セキュリティがきちんとしている」、「受付があり、秘書代行のようなサービスをしてくれる」といった利点が挙げられます。
    この他にも、企業によっては、ブランドイメージを重視してグレードの高いオフィスに拠点を構えたり、広告会社、アパレル企業など、業種によってはデザイン性の高いオフィスを好んだりと、オフィス選びにおいては、その目的や業務の内容などを含め、何に重点を置くかに考慮して選定することが望ましいと言えるでしょう。

 

賃貸契約における注意点
    賃貸契約の流れは後述のフローの通りですが、以下では外資企業が中国で締結するオフィスの賃貸契約について、注意が必要な事項をいくつかご紹介したいと思います。


1.名義の一致の確認
    賃貸契約を締結する前には、オーナーより物件の「不動産権利証」の交付を受け、当該物件が間違いなくそのオーナーの所有する物件であることを確認しておく必要があります。これは、正当な所有者でない者から賃貸を受けた場合、当然に適法に賃貸を受けたことにならない他、賃貸契約後賃貸借契約の登記を行う場合に、この「不動産権利証」の提出が必要となり、契約内容の確認が行われるためです。
    なお、「都市不動産管理法」及び「商品建物賃貸借管理弁法」においては、賃貸借契約を締結後は、物件所在地を管轄する不動産管理部門に届け出て、登記をしなくてはならないとされています。この登記手続きについても地域によって運用が異なり、上海においては、数年前までは登記手続きは必要とされていましたが、現在では当局もあまり必要ではないとのスタンスを取っている様です。よって、現在は賃貸借登記をするかについては企業独自の判断に委ねられている状況です。

 

2.物件の用途の確認
    中国の建物用途は、主に「居住用」、「工業用」、「商業用」、「オフィス用」などに分けられており、地域によっては、「居住用」や「工業用」の物件はオフィスとして登録することができないケースがあります。よって、その様な事態をさけるためにも、事前に物件の用途を確認しておく必要があります。なお、物件用途についても「不動産権利証」にて確認することができ、「用途」の欄に「住宅(居住用に使用)」、「工業(工場に使用)」、「商業(店舗に使用)」、「弁公(オフィスに使用)」、「総合(店舗、オフィスに使用。居住用としての使用は不可)」と記載されています。

 

3.賃貸期間の確認
    外国企業が中国で新たに会社を設立するためにオフィスを賃貸する場合、賃貸期間についても注意が必要となります。
    中国で会社を設立する場合、会社設立申請時に「賃貸借契約書」を関連当局に提出することとなりますが、この「賃貸借契約書」の賃貸期間が当局に提出した時点で1年以上なければ、会社設立自体が認められないケースがあります。一般的に、オフィスの賃貸契約においては、期間2~3年で契約するケースが大半であるため、契約後すぐに会社設立に手続きを進めれば問題ないのですが、事前の設立準備段階で手間取り、賃貸契約期間が1年を切ってしまうケースが稀にあり、こういったケースでは契約自体を変更するといった対応が必要となります。よって、賃貸契約の期間についても十分に留意して、契約を行うことが必要となります。

 

4.登録住所の確認
    企業は賃貸契約締結後に、オフィスの住所を会社の登録住所として登録します(新規設立の場合は会社設立申請時に、移転の場合は移転の申請時に当局に申請を行います)。この登録住所については、1つの住所につき1企業の登録が原則であり、二重登録は認められていません。よって、撤退や移転をする場合、企業は登録住所の抹消の手続きをする必要がありますが、物件によっては前に入居していた企業の登録が残ったままになっているケースがあります。
    この様なケースにおいては、オーナーより「前に入居していた企業は既に退去しており、新たな企業に賃貸をする」という証明を書面にて出してもらうことにより、対応することが可能ですが、オーナーが個人で、かつ海外などに居住している場合など、書類のやり取りに手間取り、会社設立、移転の手続き自体が遅れてしまう事があるので注意が必要となります。
    よって、契約前に以前の登録が抹消されているか、抹消されていない場合、オーナー及び不動産会社がきちんと対応してくれるのかを事前に確認しておくことが望ましいと言えます。

 

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【賃貸契約の流れ】


最後に
    前述でもご紹介した通り、旺盛な外国企業の進出もあり、オフィスビル需要は近年増加の傾向にあります。立地が良く、設備や周辺環境などが整った物件は取り合いとなっており、物件によってはオーナーも非常に強気です。
    なお中国では、物件によっては同じビルでも部屋毎にオーナーが異なっているケースがあり、同じビル内で部屋を変える場合でも、違うオーナーとの全く異なった別契約となるケースもありますので、注意が必要となります。

 

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