上海駐在レポート

第 103 回「新型コロナウイルスによる影響@深セン」

中国では祝日は旧暦で表されます。祝日の日程は旧暦なので毎年違いますが1月末から2月初旬には旧正月(春節)があります。今年は大晦日が1月24日、正月が1月25日、連休は1月24日~1月30日とされていました。春節休み中は実家に帰り家族でのんびりと過ごすと言うのが一般的です。
しかし、今年の春節は新型コロナウイルスの影響によりのんびりとは過ごせない春節となりました。
今回は日本でも多くの報道が為されている新型コロナウイルスについて、深セン市に駐在している筆者の視点からレポートしたいと思います。

 

〇深セン市における新型コロナウイルスについて

昨年12月、湖北省武漢市 で未知のウイルス感染が確認されました。今思えば当初の報道はごく僅かでした。
筆者が意識し始めたのは深セン市内でも原因不明の肺炎患者が出た1月初旬頃です。しかしこの時、感染者は百人にも達しておらずここまで大規模になるとは考えられませんでした。その後1月中旬頃には徐々に感染者数が増加していき、武漢市から周辺市へ徐々に感染が広がっていきます。
広東省は湖北省と鉄道が 直接繋がっている為、人の往来が多く、湖北省に次いで感染者数が多い地域となっています。特に深セン市の感染者数は多く、湖北省の各市を除くと中国国内で2番目に感染者数が多い地域となりました。
一方で、旧正月の年越しであ る24日から25日にはSNS上に爆竹や花火を打ち上げている動画が多く投稿されており、未だ大多数の人々は春節休みを楽しんでいるようでした。
しかし翌日1月26日には状況が一変し、中国 政府は本来1月30日までの春節休みを翌週明けの2月2日まで延長することを発表しました。
同日、「突発公共衛生事件一級響応機制」に伴う対応として公共の人が集まる場所でのマスクの着用、建物の入館時の体温測定が必須とされました。
1月28日には「広東省人民政府による企業の職場復帰と学校の開校時期に関する通知」が発表されます。内容は省内の企業の職場復帰を2月10日、幼稚園や小学校の開校を2月17日、大学等は2月24日まで延期し、中高は開校時期未定とすると言う内容です。上海や人口が集中する都市でも同様の発表がされましたが、中国では国の方針よりも地方政府の発表が優先される為、日系企業が進出している多く地域は2月10日まで事業再開が出来ない事となりました。教育機関の開校時期はその後変更され、2月28日現在も再開未定の状況となっています。
2月に入ると各省や自治体によってそれぞれ違う対応が出てくるようになります。深セン市では湖北省や感染地域への訪問者は2週間の自宅待機が義務化されました。
また、ネット上には市内のどこで感染者が出たか、感染者数やマスクの販売情報、感染者が利用した交通機関の情報が公開されるようにもなりました。
2月5日には密集住宅地域が封鎖され、住民以外は立入が禁止されます。このように僅か1週間で街の様子は様変わりしてしまいました。

 
















 

〇企業への影響

各企業は春節期間の延長に伴い、社会インフラに携わる企業以外の営業は一切禁止されました。2月10日以降に営業再開する為には各行政区の政府機関へ営業再開申請を提出し、立入検査を経た上で許可を得る必要があります。条件は具体的な管理体制の構築や消毒液やマスク、非接触型の体温計の常備が必須条件です。また、従業員数が500名以上の企業では感染者が発生した際に隔離出来る場所の確保等が必須となります。
感染者が多い深セン市の対応は厳しく、実際に2月10日からの営業再開許可が下りた企業は殆どなかったようです。日系企業を中心に聞き込みをした所、業務再開したとしても管理部門のみの営業再開許可であり、企業内の全部門の営業再開許可がなされた企業は殆どありませんでした。また営業再開基準も曖昧であり、ある深セン市羅湖区のサービス業では当初から2月17日まで営業再開許可は出せないと言われていた企業もあったようです。また、感染地域に帰郷していた従業員は深セン市へ戻ってきても自宅待機をしなければならない為、感染地域から戻ってこないと言う問題もありました。
一方で政府は企業への支援策を発表しており、国営企業が貸主となっている不動産の家賃を2カ月免除等、約9,300億円規模の支援策を打ち出しています。
筆者が執筆している今現在(2月21日時点)も刻々と状況は変化しており、事業再開の許可が下りていない企業も未だあり、混乱が続いている状況です。

 

〇生活への影響

生活への影響は多大なものとなりました。
マンションでは住人以外を立入禁止となりました。住民の出入りにも職場の出勤証明の提出が必要とされたり、一日の出入り回数が制限されている地域も多くありました。
また感染者が発生した地区では一体が封鎖され住民は外出を禁止され、生活必需品は配給されるようになりました。
その他、建物に入る時やスーパーへ入る時にも体温測定が必要です。地下鉄では実名登録が義務付けられ、乗る前に登録してから乗車します。乗車後もどの車両に乗ったのかを登録する必要があります。
深セン市では「i深圳」という政務サービスアプリに自身の健康状態、直近の市外への訪問歴を登録しなければいけません。登録は全て中国語であり、自身の居住地区の衛生サービスセンターを登録しなければならず、衛生サービスセンターを意識した事がなかった筆者はどこにあるのかも分からず非常に苦労しました。

営業している飲食店は全てデリバリーサービスや店頭受取のみとなり、店舗内での飲食は禁止されました。
休校となっている学校も、ここまで長期となってしまうと学業にも影響が出る為、教師も生徒も自宅でインターネットを利用したライブ配信授業を開始しました。
深セン市と隣接する香港では、数か所ある国境を1か所のみに制限し、更に2週間以内に中国滞在歴がある場合は14日間の自宅待機が必須としました。これにより実質中国側から香港への入境が不可となりました。深セン市内で働いている香港人は多く、ここにも影響が出ています。

 

 

〇おわりに

 筆者が執筆している時点(2月21日)では深セン市の感染者増加数は減少しています。人影がなかった街中には徐々に人々の往来が見受けられるようになりました。
経済が約1カ月に渡り停滞した為、経済活動の回復は必須です。一刻も早く経済活動を通常時に戻すべく政府は尽力しています。一方で、人の移動が自由になれば感染は拡大する可能性が大きくなります、今後どのよう政府が対応するのか、民間企業はどのようにこの苦難を乗り越えていくのか注視していきたいと思います。


 

 

 

以上
深セン駐在 吉田

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号