上海駐在レポート

第 102 回「新型コロナウィルスによる影響@上海」

〇はじめに

中国・武漢に端を発した新型コロナウィルスの感染拡大。上海でも春節前から感染者が出始め、現在でも人々の暮らしや経済活動に多大な影響を与えています。本当にここが上海なのかと思うくらい昼のビジネス街も夜の繁華街もひっそりとして、寂しささえ感じます。
今回は新型コロナウィルスに影響される上海の現状をレポートします。(本レポートは2/21時点での情報をもとに作成しています。)








 

 

〇企業再開状況

春節期間が当初の1/30までから2/2まで延長されたことに加え、上海市では一部業種を除き就業停止期間を2/9まで更に延長したため、実質的な仕事の再開は2/10からとなりました。
【再開状況】
ある調査によると、2/21時点で事業を再開している日系企業は製造業・非製造業とも9割を越えているようですが、稼働状況が通常の半分程度かそれ以下と回答した企業が半数以上にのぼったようです。春節明けに外地から上海に戻ってきた人は14日間の自宅待機を命じられるケースが多いため、従業員が復帰できていない企業も多く、また中国各地で省や市をまたぐ移動が制限されているためそもそも上海に戻ってくることができない人も未だ多くいるようです。
目下の課題は物流です。前述のように人の移動が制限されているため、国内の配送がスムーズにいかず、原材料不足や遅配、欠配が起こっています。
【日本人駐在員】
日本人駐在員については、2/12に外務省が中国全土を対象に一時帰国を至急検討するよう呼びかけたことから、上海からの一時帰国、日本からの渡航延期を決めた企業も多くあったようで、上海の駐在員は現地責任者のみ、または2/12時点で上海にいた者が引き続き残るとしている企業が多いように感じます。すべての駐在者が戻るにはもう少し時間がかかりそうです。
【勤務形態】
非製造業については事業再開はしているものの、現状では感染拡大防止のため在宅勤務を中心に、輪番制、フレックスタイム制の導入、時短営業等が主流となっており、出社する社員が少ないことから地下鉄もオフィスビルもいつもの賑わいはありません。感染防止のためエアコンの使用が禁止されているため、寒さに耐えながらの業務を敬遠する動きもあるかもしれません。

 

〇街の様子

現在、上海では空港や地下鉄の入り口のみならず、オフィスビル、商業施設、マンション等あらゆる施設で出入り口が限定され、建物や敷地に入る際には都度検温があり、名前・訪問先等の登記を要求されることもあります。またマスクをつけていない人は追い返され、中に入ることを認められません。
多くの飲食店も休業か、店内での飲食はできず、持ち帰りや宅配のみでの営業というところが多くを占めています。以下、私が見た上海の街の様子を記します。
【政府機関】
ほぼすべての政府機関が業務を再開していますが、休暇取得の推奨、輪番制での勤務等で平常時と同じように業務が行えていません。現在、非接触(窓口に行かない)での各種申請を可能にすべく矢継ぎ早に対策を打ち出していますが、政策と運用が一致していないため現場と申請者は混乱状態にあります。一方で近い将来には今回の事象を契機に当局まで出向かなくてもオンライン申請のみで各種手続が可能になるようシステムが構築されていくのではと感じています。
【銀行】
通常営業をしている店舗は少なく、休業・時短営業・輪番制で営業しています。一般的な預金・為替業務に影響は出ていないようですが、特殊な海外送金、外貨管理が絡む案件等銀行審査が必要な手続きにおいては、認可される時期が見通せない状態になっています。
【学校】
上海市内の学校は2月末まで臨時休校が続いていますが市政府は先日、3月からも登校はさせず、オンラインでの在宅方式で授業を再開すると発表しました。また日本人学校は3月末までの臨時休校を決定しています。
【宅配】
都市部で日常の光景となっている外売(ワイマイ)と呼ばれる食事の宅配サービスや物品の配送等平常時であれば自宅玄関前まで運んでくれますが、現在は入居者以外が敷地内に入ることを認めていない所が多いため、敷地外に臨時に設けられた専用の宅配置き場に置くようになっており、街のあちこちで荷物が積み上がっています。




【マクドナルド】
筆者が働くオフィスに一番近い店舗では、店内入口で検温があり、注文カウンターは閉鎖しています。スマホ決済用のセルフレジもありますが、手を使った接触作業が必要になることから、携帯アプリを利用した注文を勧められます。持ち帰りの場合には、食事を作った人と詰めてくれる人の名前と検温済であることのシールが貼られています。宅配の場合にはさらに配達員のそれも記入されている念の入れようです。






【市内に暮らす人々】
多くの市民は春節中から不要不急の外出はせず、張り詰めた中で生活をしているとの印象を受けています。地下鉄、オフィス、商業施設でもつい先日まではすれ違う人はわずかでした。
そんな上海人の運動欲求が高まっているのか、最近筆者の住むマンションでは昼はご高齢の方が、夜は家族連れや若者が敷地内をぐるぐると散歩、ジョギングをする姿が見られます。マンション敷地内が一日で一番人とすれ違う機会が多いように感じます。

 

 

〇罹患者数推移

上海市の新規感染者数は春節前後をピークに減少傾向にあります。就業期間停止や外地からの流入制限、自宅待機政策、市民の防疫意識、各単位毎の防疫対策の厳格な運用が複合的に効果をもたらしていると言えます。
一方でこのまま終息に向かうのかとの考えには疑念も残ります。今後、自宅待機や在宅勤務・時短勤務の解除が始まること、そして何より1億数千万人とも言われる春節中に田舎に帰っていた出稼ぎ労働者が上海等都市部に戻ってくることで人の移動が一気に起こり、あっという間に第2の感染拡大が起きる恐れもぬぐいきれません。上海市民も3月からの公共交通機関での移動(通勤)を一番懸念しているようです。

 


 



〇さいごに

上海での感染拡大及び防止が意識されるようになって1か月が過ぎました。最近は状況が少し落ち着いてきていることもあってか、疲れや不満を口にする人や若干の気持ちの緩みが生じている人も出てきたように思えます。
そのような中でも上海市政府は、タクシーの実名登録での乗車制度の導入、主な地下鉄路線の終電発車時刻を21時に繰り上げる(2/22からを予定)など感染拡大防止の手を緩めていません。こうした上海や北京等都市部での感染拡大防止に向けた取り組みとこれからの結果が、今後の日本の良い手本になるのではないでしょうか。
中国政府は感染拡大防止と経済の回復を同時に行うという難しいかじ取りを迫られていますがこの難局を乗り切ることで中国経済活動と働き方の新たな展開が見えてくるのではないでしょうか。

 

綺羅商務諮詢(上海)有限公司 杉山

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号