上海駐在レポート

第 101 回「深センの住宅相場について」

中国の不動産価格が高騰している事は皆さんよく知っているのではないでしょうか。ここ深センにおいても他の地域と同様、不動産価格の高騰が続いています。
深センに経済特区指定以前より住んでいる人々や20年、30年住んでいる人々は元々保有していた市内中心部の住宅を開発や価格の上昇に伴い売却し、その売却資金を元手に更なる不動産投資を行い、今や富裕層となっている事はここ深センでは有名な話です。日系企業で働いている中国人スタッフの中にも元々深センに住んでいて、日本人駐在員よりも裕福な暮らしをしていると言う話はどこの企業でも聞く事が出来る話です。
今回は経済特区指定以来、人口の流入が続き、僅か40年で北京、上海、広州に次ぐ大都市となった深センの住宅価格相場についてレポートしたいと思います。


〇中国の不動産制度について

中国の不動産と言いますが、中国では土地の所有権を売買する事は出来ません。中国では土地の私有は認められておらず、土地は全て国有地又は農民集団所有地になります。一方、建物には私有が認められていますが、その敷地の利用には土地使用権の譲渡を受ける必要があります。使用権の期限は用途毎に、40年~70年と定められています。住宅用途の使用権については、70年の期限となります。未だ期限の到来を迎えている住宅がない事から前例がないですが、期限到来後の継続申請はそのまま受け入れられるとの考えが一般的です。
中国における不動産市場は1998年に住宅配給制が廃止された事で始まり、都市部への人口集中と経済成長により価格は高騰しました。2000年代前半頃から投機資金による不動産価格の高騰が問題となり、日本のバブル崩壊を見て学んでいる中国政府は過度な不動産価格の高騰を抑制する為、いくつも政策を打ち出すようになりました。
現在では、不動産を2軒以上購入しようとした場合の税制面や条件の厳格化や不動産投資ファンドに対する税率や売買資格の調整を行う等、様々な抑制政策を取っています。深セン市においても、投機的な不動産投資を防止すべく、「只租不售(2019年12月取消)」と言われる一部の新築マンションに対して売買を禁止する政策や不動産購入後5年以内の売買禁止政策が展開されていました。
 

〇深セン市の住宅価格相場について

(1)新築住宅の相場
新築住宅の価格相場では、2019年12月時点の各都市の平均平米単価は北京市約68万円、上海市約57万円、広州市約43万円、深セン市約94万円となっており、深セン市が最も高くなっています。理由として面積が他の市に比べ狭い事もありますが、人口流入が続いている事も理由に挙げられます。その他にも大湾区構想と言う香港、マカオ、広東省の各市を含めた経済圏構築構想もあり、投機的資金の流入により新築不動産価格が上昇している事も理由となっています。
深セン市内の状況を見ると、2019年の深セン市内の主要区における新築物件の平均平米単価は羅湖区約113万円、福田区約159万円、南山区約151万円となっています。
中国国内でも住宅価格が最も高い地域である深センですが、更に現在、深セン市内で販売中の新築マンションで最も高級な物件は南山区にあります。マンション名は「深セン湾1号」と言い、平米単価315万円以上で現在販売中です。「深セン湾1号」は海の目の前に位置する高さ350メートルのタワーマンションです。マンションの階下にはショッピングモールも併設されており、プール、スポーツジム、住人専用公園等も完備されています。
日本では一般的な戸建て物件ですが、中国都市部では新築戸建て物件は非常に少ないです。深セン市内の数少ない戸建て住宅の販売例ですが、塩田区の海沿いの別荘用地にある800平米以上を有する約3億1000万円以上の物件等であり、一般家庭向けの住宅とは言い難い物件となります。

(2)中古住宅相場
中古住宅の相場ですが、日本では中古住宅の方が安くなる事が一般的です。しかし、深セン市では中古住宅の方がより都市の中心部にある為、平均平米単価も中古住宅の方が高くなっています。
深セン市内で住宅地として最も人気のある地域は平均平米単価約170万円の南山区です。著名な企業の本社やインターナショナルスクール等の外国人向けの施設も多い地域です。また、海沿いの地域になると高級住宅地が広がっており、他の区と違い、古い町並みが少なく、近代的な街づくりが成されている事が人気の理由だと言われています。
一方、深セン市成立以前より存在した地域でもあり、深セン市の中心的な区の一つである羅湖区ですが、平均平米単価約97万円と福田区や南山区に比べ安くなっています。羅湖区は最初に開発されてから既に40年近くが経っており、老朽化した建物も多くなっている事から不動産価格も低めになっています。しかし、現在政府主導で低層の古い住宅地域の再開発が行われており、今後住宅の高層化がなされていく予定となっています。


〇深セン市の家賃相場

前述のように高額な物件を購入するのは一般的にはなかなか難しいように思われます。その為、深センに住む多くの人々は賃貸住宅で暮らしています。 深セン市内の家賃相場ですが、物件購入に対し、リーズナブルな価格となっています。一番高い南山区では月の家賃の平均平米単価は約1,764円ですが、これは東京23区の平均平米単価2,672円よりも低い相場となっています。2018年の深セン市の平均月給9,192元(約14万円程度)と平均給与水準から見てもさほど高いようには思われません。ましてや都心部から通勤距離30分圏内となると、日本では更に割高となります。上記の中古住宅価格で購入して、賃貸に出すと考えた場合ですが、南山区ではその回収に80年を要する事になります。その為、深セン市の不動産投資は家賃収入を目的とした投資ではなく、その殆どが今後の値上がりを期待した投機目的となっています。


〇おわりに

中国の文化として、結婚する際に男性は住宅を持っていなければならないと言う考えがあります。筆者の同僚である中国人男性スタッフも結婚を考えており、住宅を探しています。頭金3割に必要な資金を貯めていると言いますが、自身の蓄えだけでは資金が足りず、両親からの援助が必須となるとの事です。10年前と現在では住宅価格が違い過ぎてしまっており、同僚は実家に戻って結婚生活を送ろかと悩んでいます。現在の深セン市の住宅価格が正常な範囲なのか、住宅バブルなのかは分かりませんが、今後価格がどうなるのか、どのような人々が深センに住むようになるのかを見ていきたいと思います。

 

(1元≒約15.75円) 以上 深セン駐在 吉田

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