上海駐在レポート

第 100 回「深センのユニコーン企業」

深センと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。この数年で深センの知名度は遥かに向上しましたが、深センには観光地と言える場所は特段ありません。しかし、深センには多くの外国人が来訪しており、その殆どが観光ではなく仕事が目的です。日本からも多くの出張者が来ますが、深センの巨大な電子部品卸売市場、無人コンビニ、無人レストラン等を視察し、ベンチャー企業を訪問する事が多いように思われます。
今回はこのベンチャー企業の代表と言える「ユニコーン企業」についてレポートしたいと思います。






〇ユニコーン企業とは

ユニコーン企業とは、一般的には企業としての評価額が10億ドル(約1,096億円)以上で、非上場の設立10年以内のテクノロジーベンチャー企業の事を指します。ユニコーン企業と言う言葉はアメリカのベンチャーキャピタル会社が初めて使ったとされており、ユニコーンのように珍しく、莫大な利益をもたらしてくれるという意味から、この言葉が生まれました。今では世界的に有名なFacebookやTwitter、Alibaba等もユニコーン企業と呼ばれていました。現在、有名なユニコーン企業としてはUber(ウーバー)、Airbnb(エアービーアンドビー)、日本でも販売を開始した中国のスマホメーカーの小米(シャオミ)があります。


○世界のユニコーン企業

 ユニコーン企業の定義は上述しましたが、各国の研究機関が各々企業価値を判断しユニコーン企業を公表しています。但し、アメリカで発表される企業数と中国で発表される企業数には大きく差が開いており、ユニコーン企業の定義として未上場である事が挙げられている為、企業価値を正確に判断する事が容易ではないことが要因と考えられます。また、外国の未上場企業の企業価値を判断することは更に難しいと思われます。
アメリカの調査会社が発表しているユニコーン企業数は世界で約310社、うちアメリカを拠点としている企業が151社、中国が82社、日本は1社(㈱Preferred Networks)となっています。
一方、中国の研究機関が発表しているユニコーン企業数は世界で約494社、うちアメリカは203社、中国は206社、日本は2社(㈱Preferred Networks、QUOINE㈱)と中国企業が大きく増加しています。
中国では「設立後10年以内の企業」ではなく、「2006年以降に設立された企業」と定義が違う事からも数が大きく変わっており、ユニコーン企業の本来の意義性は薄れつつあるのではないかとも思われますが、このユニコーン企業群から現在の世界トップ企業が生れた事も事実であり、今後が期待される企業である事は変わりません。


○中国のユニコーン企業

アメリカ、中国のユニコーン企業数に比べ日本のユニコーン企業数が圧倒的に少ない理由はベンチャー企業の資金調達方法の違いだと言われています。
日本でベンチャー企業が資金調達を行う場合、多くが融資に頼る事が多いように思われます。筆者自身、中国に赴任するまでの銀行員人生を中小零細企業向け営業として過ごしました。日本のベンチャー企業が巨額の資金調達を行う事がいかに困難なのかは身を持って触れてきました。
しかし、中国では銀行は中小零細企業への融資には消極的です。実際に中国には日本のような保証協会制度は無く、担保を要求されるケースが多いようです。担保を提供出来る企業も限られている為、銀行融資に頼る企業が少ないのが実情です。現在、中国政府は各銀行に中小零細企業への支援を促しており、今後中小零細企業への融資制度が確立されてくるのかもしれません。
深セン市の発表では、2018年の深セン市の企業登録社数は248,200社と、中国の中でもトップの登録数となっています。
過去の記事でも記載しましたが、中国のビジネスモデルは先行投資を行い、市場の独占、一定の顧客層を確保してから黒字化を目指すスタイルが多いように思われます。創業初期の資金調達が今後のビジネスを左右する事から、深セン市内では連日ベンチャー企業によるプレゼン大会が行われ投資家とベンチャー企業のマッチングが行われています。
そのような競争を勝ち抜いた企業の一部が大企業から巨額の投資を受け、その巨額投資を背景に事業拡大を続け、ユニコーン企業と呼ばれるようになるのです。ユニコーン企業として認定される事で世界的に認知され、更なる事業拡大を行うことが出来ます。





〇深センのユニコーン企業

 中国の研究機関によると中国国内のユニコーン企業は206社ですが、このうち北京に拠点がある企業数は82社、上海が47社、杭州19社、深セン18社となっています。深センのユニコーン企業でもっとも有名な企業はドローン最大手のDJIでしょう。
その他にも数多くのユニコーン企業が存在していますが、特徴としてBtoCの事業モデルが多い事が挙げられます。また、モノづくりを行っている企業が入っている事も特徴として挙げられ、Huaweiのような通信機器メーカーの存在により精密部品メーカーが数多く存在し、このモノづくりとIT技術が共存する事こそが世界から注目されている点と言われています。


〇おわりに

 近年は中国の内需拡大により成長したこれらの企業が中国国内から海外へ目を向けるようになってきています。このような企業はまず香港に資金調達会社を設立します。理由として香港の資金調達機能と自由な資本移動が可能だからです。深センでは、香港の隣に位置する立地を活かして香港に早々に拠点を設置する企業もあり、海外進出に旺盛な企業が多いように思われます。今後、深センから世界のトップ企業が生まれ、日本でも見る事が出来ると思うと、この発展著しい深センに駐在している事が非常に誇らしく思えます。

(1ドル≒約109.60円)
以上
深セン駐在 吉田

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