上海駐在レポート

第 94 回「カフェ戦国時代」

   筆者は日本に居た時、出社前にカフェに寄ってコーヒーを飲む事が日課でした。日本では同様の日課を持つ人は多いのではないでしょうか。しかし、深センに駐在してから通勤途中にカフェが無い為、コーヒーをほとんど飲まなくなりました。そんな中最近、筆者が勤務するオフィスビルに瑞幸咖啡(luckin coffee)と言うカフェが出来た事で再びコーヒーを飲むようになりました。今回は中国・深センのカフェ事情についてレポートしたいと思います。

 

〇中国のコーヒー事情

   以前の中国ではコーヒーはごく一部の人が飲む飲み物であったそうです。実際、現在でもコンビニに売られているコーヒーはごく僅かな種類で甘いコーヒーのみという状況です。しかし現在の中国にはコーヒーを提供するカフェは数多く存在しています。スターバックスや英国系のCosta coffeeが進出した事によって中国の人々もコーヒーが身近になったと言います。国際コーヒー機関(ICO)によると中国のコーヒー豆の消費量は近年増加傾向にあり、直近5年でその消費量は35%も増加したと言います。しかしながら、その消費量を見てみると年間195千トンと日本の498千トンと比べると意外な程小さな規模なのです。日本の全日本コーヒー協会のアンケート結果によると日本人の1人1週間当たりのコーヒーを飲む量は2018年10.62杯との事です。人口が14億人近くいる中国では計算すると一人当たりの消費量1人1週間当たり0.28杯となり、ほとんどコーヒーを飲まないのだと分かります。
   近年、中国のコーヒーの消費量が増加している事は事実であり、現在は外資系企業のカフェばかりではなく、中国資本によるカフェも存在感を増しています。
 

〇中国のカフェチェーン店

   2018年、luckin coffeeというコー2.jpgヒーチェーンが中国で話題となりました。話題となった理由は、驚く程のスピードで店舗数を増加させた点です。luckin coffeeは2018年1月に北京で1号店をオープンし、設立から約半年で500店舗、2018年末の店舗数は2,000店まで急拡大しました。2019年には年内に合計4,500店舗にまで増やす計画であり、企業の成長が速い中国でも別格の拡大スピードです。2018年7月には中国史上最速でユニコーン企業(評価額が10億米ドルを超える未上場企業)の仲間入りを果たしました。

    luckin coffeeの特徴はアプリでコーヒーを注文し、店舗での受け取りか配送かを選ぶスタイルにあります。実際、店舗に行って直接注文しようとしても「アプリから注文してください」と言われてしまう程です。

   スターバックスが「第三の場所」の提供をコンセプトに、居心地の良さを重視するのに対し、luckin coffeeは、「場所にはこだわらない」コンセプトを掲げ、テイクアウトや配送を前提とした店舗運営を行っています。店舗を構える場所は、主にオフィスビルのロビーのような場所であり、この5月には筆者の勤務するオフィスビルにも開店したのです。アプリから注文し、3分程度で商品完成のメールがスマートフォンに送られてきます。スマートフォンに表示されるQRコードを店舗でかざし、商品を受け取るという流れとなっており、並んで待つという事はありません。価格はスターバックスのブラックコーヒーが31元(約487円)の値段であるのに対して、luckin coffeeは21元(約330円)となっています。価格設定はその他のカフェチェーンと比較すると高くもなく、低くもない価格となっています。

 
   このluckin coffeeが注目4.jpgされている理由はもう一つあります。アプリのダウンロード特典や紹介特典で無料クーポン券を配布したり、50~90%OFFクーポンを頻繁に配信したりと非常にお得なように感じる点です。顧客がお得に感じているという事は企業にとっては損となっている場合が多いですが、luckin coffeeも同様の問題を抱えていると言えます。

   2018年末、事業開始以来9ヶ月で赤字額が約8億5,700万元(約134億5,940万円)に上ったと発表されたのです。将来有望な市場にスタートアップが多数参入し、採算度外視で大量のクーポンをばらまき、ユーザー獲得と市場拡大を図るという戦略は中国では珍しくありません。消耗戦の過程で体力のない企業は淘汰され、最後まで生き残った1、2社が市場を総取りする構図は、シェア自転車や出前アプリを彷彿とさせます。

   まさしく現在の中国はこのluckin coffeeの参入により、カフェチェーンの戦国時代の様相を呈しているのです。中国の民間研究機関である前瞻研究所の調査によると中国カフェチェーンの割合は未だスターバックスが最大勢力となっていますが、今後変化していく事は確実と言えるでしょう。

 

〇人気のカフェチェーン店

   上記の通り、中国の人々は日本人のよ3.jpgうに一般的にはコーヒーを飲みません。多くの人々はコーヒーではなく、やはりお茶や水を好んでいる様に思われます。特に人気のある飲み物は、台湾発祥のタピオカミルクティーです。日本で人気の台湾系「貢茶(GONGCHA)」ももちろん中国にもあります。又、コンビニやマクドナルド等の店舗でもタピオカミルクティーは商品展開されており、人気振りが伺い知れます。商品自体には日本との大きな違いはありませんが、値段が大きく違います。日本の「貢茶」のタピオカミルクティーが1杯490円に対して、深センにある「貢茶」では1杯15元程度(約236円)とコーヒーの値段と比較してもお手頃に感じられます。
   その他にもお茶をベースにした甘いドリンクを提供するカフェも人気があります。「喜茶(HEYTEA)」、「奈雪の茶」というチェーン店もその一つです。2016年ごろから深センを拠点に「喜茶」は約160店舗、「奈雪の茶」は180店舗と店舗を増加させており、上海、北京にも進出しています。
   これらのカフェが提供するドリンクはウーロン茶や緑茶、紅茶などお茶の種類を選び、クリームチーズソースを載せ、マンゴーやイチゴの果肉をトッピングします。こうした定番ドリンクは、1杯20~30元(約314~471円)で購入できます。人気の理由は、女性顧客をターゲットにした店舗の内装、糖分を抜く等の細かな注文が出来る点、スイーツ系のパンが一因となっているようです。
 
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○終わりに

   連日30度を超える日々が続く深センで、筆者が涼を取るためスターバックスに入店すると、日本と違い空いているのです。スターバックスでパソコンを広げて仕事をする社会人は滅多に見かけません。ましてやレポートをする大学生、勉強をする人の姿はあまり見かけません。中国では高価な存在であるのも一つの要因ではありますが、やはりコーヒーを飲むという習慣がない事が主な要因となっているのでしょう。今後、朝のひと時をカフェ過ごすという習慣がこの中国で根付くのか、また、この戦国時代の勝者はいったい誰になるのかをカフェでコーヒーを飲みながら注視していきたいと思います。

 

 
(1元≒約15.7円)
以上
深セン駐在 吉田
 
 
  
  
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