上海駐在レポート

第 90 回「帰任報告~深セン駐在総括と大湾区構想~」

2年半の深セン駐在を終え、この4月に帰任する事になりました。この2年半の間に中国や深センを取り巻く状況は大きく変化しました。今回は、現在の深センの印象と今後さらに深センを成長させる大湾区構想についてレポート致します。

 

○深センの印象

14.jpg2016年の国慶節期間中に初めて深センに降り立った時に、そびえ立つビル群を見てき圧倒されたことを今でも良く覚えています。その頃から深センの成長の勢いは衰えず、街中の至る所で都市開発が行われ、新しい高層ビルや地下鉄が次々に建設されています。街を行き交う路線バスやタクシー等は、深セン市政府から発令が出された翌日には、すべてガソリン車から電気自動車に切り替わった事など深センという都市のスピード感にも、驚く事が多々ありました。2017年には広州のGDPを抜き、中国の全都市の中で3位(1位上海、2位北京)になり、未だに経済成長を続けています。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

そんな経済成長が著しい深センを語る上でWeChat Pay、Alipay等の電子決済サービスや、AI・IOTの発展により出現した無人店舗等の新たな施設の存在は欠かせません。特に電子決済サービスは、筆者の赴任当初から存在していましたが、当時はタクシーや地下鉄、小売店舗や飲食店では電子決済サービスが使用できない場所も多くありました。この2、3年で状況が一変し、今や電子決済で支払いが出来ないサービスが見当たらない程になっています。現在、日本でも電子決済サービスの導入に力を入れていますが、この点は、特に日本よりも中国が進んでいる分野であると印象を受けました。

その他に、深センは『紅いシリコンバレー』と称され、イノベーションのメッカの都市と認知される様になりました。優れた知識や技術を有する人材は、深セン市政府から多大な支援を受けられる事や、サプライチェーンが整備されていることもあり、1日に約1,000社もの新しい企業が深センに誕生しています。

次第に、日本のTV、新聞、雑誌等でも取り上げられ、深センの認知度が増していき、日本から多くの視察団の方が来られるようになりました。日本の企業の方々が、急成長する深センのベンチャー企業との協業または、投資対象の検討先と捉えはじめた事も大きな変化のひとつです。また、2018年頃には、米中貿易摩擦の最中に巻き起こった深センに拠点を置くHUAWEI社の騒動によりさらに世界からも注目される都市となりました。

 

○大湾区構想

この様な流れの中、ハイテク産業をはじめとした新産業の重要な発信地として一大経済圏を構成する事を目標とする『大湾区構想』が立ち上がりました。

大湾区とは、広東省珠江デルタ地域の中国9つの都市(深セン、東莞、広州、仏山、恵州、江門、肇慶(チョウケイ)、中山、珠海)と、香港、マカオ特別行政区から構成される計11都市から形成される都市圏です。各政府が経済協力を強化し、『広東省・香港・マカオ協力深化による大湾区建設推進枠組み協定』の締結を契機に 国家戦略として動き始めています。さらに、中国政府は「大湾区を2030年までにGDP規模で東京・ニューヨークを追い越し、世界一のベイエリアにする」との公言しており、以下の重点目標を掲げています

 

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大湾区は域内主要都市を結ぶ一連の交通インフラを整備し、域内を1時間程度で結ぶことを目標に掲げ、巨大マーケットの勃興を目指します。以前の本レポートでお伝えしました深セン、広州等の中国本土と香港を結ぶ高速鉄道『広深港高鉄』と、香港-マカオ-珠海を結ぶ全長55kmの海上橋である『港珠澳大橋』が共に2018年に開通しました。『港珠澳大橋』は、香港~マカオ・珠海にかけてイミグレーションがありますので、チケットを購入してリムジンバスに乗車します(乗車代 65HKD(≒約910円))

 

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『港珠澳大橋』の開通によって、陸路で数時間を要していた香港-マカオ・珠海間の移動時間を大幅に短縮しています。他にも広州・東莞を繋ぐ『虎門二橋」(2019年上半期開通予定)や、 深センと中山を海上橋により結ぶ高速道路『深中通道」(2024年開通予定)などの大規模なインフラプロジェクトが次々と進捗しており、地域間のアクセス向上が物流や華南地区の観光業、産業の発展を促進すると期待されています。

 

○終わりに

 

大湾区構想によって、深センは、香港、マカオと他の華南都市と連携し、さらに勢いが増していくものと思われます。今後、深センを新たな販路先として進出するのか、それとも深センの新興企業の技術と協業、または、投資先とするのか未知数ではありますが、この成長の勢いがどこまで続くのか非常に楽しみです。

筆者も今年の4月より日本に戻りまして、深セン駐在で得た経験を基に皆様のサポートを行って参りたいと思います。2年半のご愛読ありがとうございました。

 

(1HKD≒約14円)

以上

深セン駐在 掛川

 

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